まちの結節点としての地下鉄駅出入口
〜地下鉄仙台駅を対象として〜
大山万智
平岡研究室
2020 年度卒業
 近年様々な社会問題を背景に公共交通機関の利用が促されています。公共交通機関を利用するにあたり、乗り物だけでなく移動の際に利用される施設もまた人々の感じる「移動しやすさ」に影響を与えると考えられますが、現段階の地下鉄仙台駅ではまだまだ地上-地下の移動のしにくさを感じることができます。本研究では調査・設計を通して移動しやすいまちづくりに繋げることを目指します。

はじめに

  1. 近年様々な社会問題を背景に公共交通機関の利用が促されている。公共交通機関を利用するにあたり、乗り物だけでなく移動の際に利用される施設もまた人々の感じる「移動しやすさ」に影響を与えると考えられる。その一つである地下鉄駅において地下鉄線の開業と共に設置された地上出入口は、歩道上のものや施設に接続されたものなど様々なものが見受けられるが、現段階の地下鉄仙台駅では地上―地下の移動がしにくく、地下鉄を利用するにあたってマイナスなイメージが克服されていないように感じる。本研究では地下鉄出入口に着目し、調査・設計を通して移動しやすいまちづくりにつなげるこ
    とを目的とする。

調査

◎既往研究について
北川らの研究1)では東京都の地下鉄駅における各出入 口の接続タイプを図1のように分類し、出入口単体の利 便性を「接続性」として評価している。地下鉄駅建設初 期の主流であった歩道上型は、「開口部断面積」におい て接続性が低い傾向にあること、後期の主な形態である 他施設併設型では、「エスカレーター(ESL)」や「ターン 回数」、「出口幅」に関して接続性が低い特徴があると いう結果を得ている。
◎出入口の接続タイプ
既往研究の出入口接続のタイプ分類を用い、仙台市の 地下鉄出入り口を5つのタイプに分類する。まず図1に示 すように、出入口を歩道上設けられるものと敷地内に設 けられるものに分類する。歩道上に設置されるタイプを 「1歩道上型」とする。敷地内に設置される出入口のう ち、鉄道事業者が単独で建てた出入口を「2単独型」と
する。さらに敷地内の他施設と併設されたもののうち、地下レベルでのみ商業施設に接続しているものを「3デパート型」、大規模都市開発に組み込まれたものを「5都市開発型」、それ以外の一般的なものを「4他施設併設型」とする。
◎仙台市地下鉄南北線・東西線の現状
仙台市の地下鉄南北線全70出入口、東西線全25出入口分 類する。図1の1~5に分類不可能なものに関しては「6 その他」の出入口タイプを新たに設け振り分けた。また、 敷地内に駅舎があるものは、駅に直接出入口が設置される ため排除した。
仙台市地下鉄南北線は、1987年に開業しそれに伴い地下 鉄駅が建設されたが、南北線の地下鉄駅では古いタイプで ある歩道上型(43%)や他施設併設型(10%)が多く残っている ことが分かった。また、近年再開発が進む長町地区では、 都市開発型(10%)やESL付属の単独型が見られ接続性が高 い出入口がみられた。
2015年に新しく建設された地下鉄東西線は、現在日本で 一番新しい地下鉄線として運行されている。東西線の建設 ではまちづくりとともに地下鉄駅が建設されたため駅舎の 形が単純であり、地上に自転車等駐車場やロータリーを設 けることで人々にランドマークとして認知されるような工 夫がみられる。また、ほとんどの出入口が敷地内に設けら れ(単独型+都市開発型 84%)、ESLやエレベーター(EV) が多く設置されており出入口としての接続性が高いことが 分かった。
◎現地調査
現地調査を行った結果、地下鉄駅仙台駅では不便な地上 出入口が多いのが現状であることが分かった。愛宕上杉通 りと青葉通りが交差する地点では、接続性の低い傾向にあ った歩道上型出入口が多く設置され、方向定位の欠如やEV の設置個所の少なさ、ESLが途中までしかないことによる 地上―地下間の移動のしにくさといったバリアフリー面で の課題があることが分かった。
◎仙台市でのインセンティブ制度について
仙台市では駅接続に関して一般総合設計制度や国が認め る都市再生特別地区などによって容積率の割増を受けるこ とが可能である。また2020年より「せんだい都心再構築プ ロジェクト」がスタートした。仙台市では駐車場整備地区 や商業地域等において一定規模以上の建築等を行う事業者 に対し駐車施設の附置を義務付けている。この制度では建 物の地下通路等による鉄道駅の接続など、公共交通機関の 利用を促すような施策に対し附置を義務付ける駐車台数の 緩和を受けることが出来る。

研究方法

1 既往研究をもとに仙台市地下鉄南北線・東西線の 地下鉄駅出入口を比較し特徴を掴む
2 地下鉄仙台駅の現地調査および問題点の指摘 3 地下鉄仙台駅地上出入口の改善案の設計

まとめ

本研究では、地下鉄を利用する際の「移動しやすさ」に つなげること目的に、地下鉄駅出入口に着目した調査・設 計を行った。1987年開業の地下鉄南北線では不便な出入口 が多く残っていることが明らかとなり、これから迫る建物 の更新と共に出入口も利用しやすいものに更新していく必 要がある。2020年より仙台市では「せんだい都心再構築プ ロジェクト」が施行され、地下通路等による鉄道駅接続に よる容積率や駐車附置義務の緩和などを受けることができ る。このような制度が活用され移動しやすいまちづくりに 繋がることを期待する。

参考文献

1)北川貴巳, 黒瀬武史, 窪田亜矢, 西村幸夫, 2015, 「東京都心部における地下鉄駅 出入口の変遷と実態に関する研究 接続性に着目した評価」, pp.677-686, 日本建築 学会計画系論文集

2)仙台市, 2009,「仙台の再開発」パンフレット

3)仙台市 まちづくり政策局政策企画課. 2020.「せんだい都心再構築プロジェクト 第1弾

4)国土交通省 都市計画関連施策

研究を終えて

地下鉄を利用する際に自分自身が不便だなと感じた地下鉄駅出入口をテーマに研究に取り組みました。実際に調査の結果でも地下鉄仙台駅には不便な出入口が多いことが明らかとなり、まだまだ改善の余地ががあると感じました。今後出入口接続に役立つ制度などが増え、移動しやすいまちづくりにつながることを期待します。

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