人と地球の未来のための循環型屋内農業
日野舞
平岡研究室
2020 年度卒業
水を循環させながら野菜の水耕栽培と淡水魚の養殖を同時に行う「アクアポニックス」という循環型農業を運営する、都市部でも実現可能な屋内農業施設を設計しました。人々が気軽に循環型農業の手法について学び、未来の農業を考える場所とすることで、人々の持続可能な農への意識を高めることを目指しています。

はじめに

主に屋外の広い敷地を使って行う従来の農業では、環境に負荷がかかる手法が使われていました。それに対し、近年では様々な資源を循環させながら農業を行う循環型農業というものが注目されています。また、農業は屋内で行うことによって、季節関係なく栽培が可能になるなどのメリットがあります。そこで、循環型農業を屋内で取り組むことができれば、環境負荷を極限まで抑えた農業を実現することができるのではないかと考えました。

調査

まず、循環型農業の種類や屋内農業の手法について調査をしました。その中で、屋内で行う循環型農業としてアクアポニックスが最も最適だと判断しました。アクアポニックスとは、水を循環させることで、野菜の水耕栽培と淡水魚の養殖を同時に行うシステムです。魚の排泄物で生成した液肥を水耕栽培で使用し、植物が栄養を吸収しながら成長する過程で水を浄化し、それを魚の養殖に使うというサイクルが成り立ちます。アクアポニックスに取り組むことによって、管理のしやすい無農薬栽培が可能になり、効率良く作物を生成することができます。

研究方法

上記のアクアポニックスを運営する屋内農業施設を設計しました。日中は太陽の光を使って作物を育てられるように、壁面にはETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン)という透光性の高い素材を使用し、太陽の光が当たる場所にアクアポニックスのシステムを設置するよう構想しました。

敷地は西公園の仙台市民プール跡地を選定しました。都市公園として位置付けられている西公園はイベントなどで人が集まりやすい場所であり、都市生活者の生活拠点に近い場所にありながらも自然を感じられる場所です。南側に整備される予定の多目的広場を使って農や食に関するイベントを開催し、賑わいを創造することを狙いとしています。

まとめ

循環型農業を運営する屋内農業施設が世界中の至る所に設置され、より規模の大きいものができれば、環境に負荷をかけずに全ての人々のもとに食料を届けることができ、世界中で起きている環境問題や食料問題を解決に近づけられるのではないかと思います。また、そういった持続可能性がある農業について現代人に知ってもらうことも期待しています。

参考文献

・『垂直農場 明日の都市・環境・食料』ディクソン・デポミエ[著]依田卓巳[訳](2011)NTT出版

・『はじめてのアクアポニックス 実践マニュアル』ロレーナ・ビラドマ、フィリップ・ジョーンズ[著](2017)株式会社アクポニ

・農林水産省「2020年農林業センサス結果の概要」(令和2年2月1日現在)(令和2年11月27日公表)

・農林水産省「食品循環資源の再生利用等実態調査」(平成29年度)(平成31年3月29日公表)

研究を終えて

本来は屋外で行われる農業を屋内で取り組めるようにするという、あまり前例のない建物の設計の難しさを痛感しました。自分で調べて考えて形にする過程で、そういった新しい物を作り出す能力が培われていたら嬉しいです。

メニュー