秋田“あったか”商品の提案
ー移住促進のための「暮らし」に着目したブランディングー
非公開
日原研究室
2020 年度卒業
秋田県が抱える深刻な人口減少の課題に着目し、秋田県に若者の移住を促す施策の提案を行った。コロナ禍で増加している地方への移住検討者をターゲットに、秋田の安心感ある暮らしを『あったか』と表現して秋田ならではの商品の考案とパッケージデザイン、秋田で暮らす良さを伝えるリーフレット商品やリーフレットを展開し制作を行った。

はじめに

秋田県が抱える課題

秋田県の人口は年々減少しており、2017年にはついに100万人を切った。人口減少率はここ数年連続で全国最大となっており、現在の人口は約95万人。2025年には高齢者数も減少に転じるといわれており、秋田県が抱える人口減少の課題は深刻なものである。人口減少に歯止めをかけ、雇用を増やしていかなければ、経済活動の縮小が加速してしまう。若者の秋田県への移住・定住を促し、秋田県に人を呼び込む施策が早急に必要である。

研究目的

本研究では、秋田県が独自に持っている魅力を明確にし、ブランディングを行うことで世間にその魅力を認知させ、若者の移住・定住を促す方法を考案する。

調査

1.文献調査

地域ブランディングの成功事例の調査を行った。瀬戸内海「直島」、島根県海士町の二つの地域のブランディングの例を参考に、

  • 地域独自のものを明確にすること
  • 直感に訴えるキーワードやキャッチコピーで地域のイメージを具体的に可視化すること

が重要であると考察した。

2.アンケート調査

秋田県が独自でもつ魅力を表すキーワードの選定を目的に秋田県出身者にアンケート調査を行った。

アンケートの結果から、『日々の暮らしや日常から感じられる安心感』こそが、秋田県がもつ本質的な魅力だと考えた。

研究方法

1.提案内容

調査結果から、秋田県がもつ魅力である「日々の暮らしや日常から感じられる安心感」に着目した、移住促進のための商品を提案する。コロナ禍で増加している地方への移住を検討している人をターゲットに、秋田ならではの商品の考案とパッケージデザイン、秋田で暮らす良さを伝えるリーフレットの制作を行う。

2.制作

①ユーザーモデルとライフジャーニー

提案する商品全体のターゲットを具体的にイメージするため、ユーザーモデルとライフジャーニーを作成した。

 

②キャッチコピーとロゴマーク

ユーザーモデルとライフジャーニーをもとに、以下のようなキャッチコピーとロゴマークを作成した。

③商品の概要とパッケージデザイン

秋田を生活の中でより身近に感じてもらうことを目的とし、商品を展開。ユーザーモデリングとライフジャーニーから得られたニーズである「移住先を決めるひと押し」として、また「家族みんなで体験して秋田に住みたいと思えること」に繋げる。

  • 秋田で ”あったか”ごはんセット

  • 秋田で ”あったか”おふろセット

④リーフレットの概要とデザイン

秋田で暮らすリアルさをデータで伝えることを目的とし、東京での暮らしと比較して秋田でのゆとりある安心安全な暮らしを示すことで、秋田でのゆとりある安心安全な暮らしをより魅力的に感じさせる。

3.検証と結果にもとづいた改善

①リーフレットのデザイン評価

リーフレットを読む前と読んだ後の秋田に対する印象の変化、リーフレット全体の印象を問うアンケートを行い、以下のような結果が得られた。

  • リーフレットを読む前は秋田について「陰気」で「住みにくそう」という印象をもつ人が多かったのが、読んだ後には「陽気」「住みやすそう」と回答した人の方が多くなった。

⇒リーフレットを読むことで秋田へのマイナスイメージが払拭できている。

  • リーフレット全体の印象を問う質問では、「やわらかい」「安心感のある」「穏やかな」「明るい」という回答が多い結果となった。

⇒伝えたい秋田のイメージが伝わっている。

  • 自由記述欄では雪の多さや交通の便に住みにくさを感じてしまうという声が多くみられた。

⇒情報を追加する必要性

 

②リーフレットの改善

アンケートの結果をもとに、リーフレットの内容の改善を行った。住みにくいと感じてしまうという声があった雪の多さや交通の便については、地域によって違いがあるため、それぞれの地域の特色を紹介するエリアガイドを作成した。

まとめ

1.考察と展望

アンケートの結果から、秋田の安心感ある暮らしを『あったか』と表現して商品やリーフレットを展開したように、キャッチフレーズや全体のデザイン、ピックアップする情報などで地方のマイナスな印象を払拭できることがわかった。今回改善を行ったように、マイナス面をポジティブに伝える工夫が必要だが、伝える情報の内容については今後も模索していく。

2.まとめ
コロナ禍の今、移住地域への理解を深めることが必要だが、実際にその土地に訪れることが難しい中でいかに魅力を感じられるかが重要である。今回二つの面から商品とリーフレットを考案したように、秋田ならではの商品を生活の中で使ってもらうこと、そしてリーフレットで実際に秋田に移住したときのイメージを膨らませてもらうことで、移住検討者は秋田を身近に感じながら秋田での生活を具体的想像でき、実際の移住に繋がるのではないか。

参考文献

美の国あきたネット 秋田県の人口と世帯、https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/9910 (2020年12月閲覧)

『データで見る秋田と首都圏の暮らし(令和2年1月作成)』、https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/46826(2020年10月閲覧)

隠岐郡海士町オフィシャルサイト、
http://www.town.ama.shimane.jp/topics/3000-1/post-72.html(2020年7月26日閲覧)

「直島(なおしま)観光旅サイト」直島町観光協会公式、
http://www.naoshima.net/(2020年7月26日閲覧)

三芳寛要(2015)『強さを引き出すブランディング』
パイインターナショナル

研究を終えて

地元である秋田県をデザインの面から元気にしたいという思いがあり、これまでの学びを活かしながら研究と制作を進めていきました。秋田について考える時間が増えたことで、改めて秋田ならではの魅力を感じることができ、地元愛もさらに増しました。今後も自分にできる地域貢献をしていきたいと思っています。

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