コロナと共存するための対策法
―旅する手紙―
市川満喜
中田研究室
2020 年度卒業
時間とともにコロナに慣れ、対策や考えに甘さが生じ、未だ感染者は減少していない。そこで、自発的に行いたくなるコロナ対策のデザインを考案し、コロナとの共存を実現することを目指す。今回制作した「旅文ポスト」ではポストに投函するという行為に広がりを持たせ、その一部に消毒行為を組み込んだ。一部に組み込まれていることで、多くの人が自然な流れで感染対策を行うことを可能にし、共存に近づくことが期待できる。

はじめに

コロナ流行により、私たちの日常生活は大きく変化した。同時に、課題も出てきた。私はその中でも特に、旅行とコロナ対策の問題に注目しました。夏頃から開始したGotoキャンペーンなどの経済政策により春頃と一変、多くの人が外出するようになった。しかし、それと同時に感染者も再び増加したのだ。コロナ流行前の生活とは変化した日常生活を送っているはずなのにどうしてまたコロナ感染者は増えてしまったのだろうか。マスク未着用や消毒しないなど基本的なコロナ対策さえ怠っている人がいるからではないだろうか。コロナに慣れてしまったことや、自分は大丈夫だという考えの甘さがあるからではないだろうか。コロナが増加すればするほどその原因となりうる観光業や飲食業に大きな打撃を与えている。そのため、感染対策や考えの甘さなどのコロナ渦の問題にデザインの提案を通して改善していく。

コロナの感染をこれ以上に広げることなく、旅行や食事などの機会を少しでも増やすことで、よりコロナと上手く付き合っていけると考える。そのためには、課題となっているコロナ対策に対する行動や考えの甘さをカバーする必要がある。コロナの感染対策や考えに一人一人が自覚を持ち、感染者を減らすために、少しでも多くの人が行いたくなるコロナ対策のデザインの実現することを目的とする。

調査

自発性を誘導するために必要な要素を以下のように考察した。
・話題性(インスタ映えなど)
・老若男女が利用できるデザイン(高さや心臓への配慮)
・好奇心をくすぐるデザイン
・興味関心を引くデザイン
・消毒という行為が別の目的に付随する
以上の考察を基にデザインを考案する。

研究方法

提案するのはポストに投函するというストーリーの中に、消毒という行為を組み込むことである。この提案を「旅文ポスト」と呼ぶ。

「旅文ポスト」は主にコロナの影響を大きく受けている観光地を対象に設置し、ポストを介して人と人との想いを繋ぐシステムである。ターゲットは、観光地に訪れた人とそこで働く人々である。旅文ポストには旅行の思い出やおすすめの食べ物、お店、観光地を励ますようなメッセージなどのそれぞれの想いを書いた手紙を投函する。匿名にすることでありのままの思ったことを書きやすくする。投函された手紙は二週に一度、ランダムに選ばれた観光地で展示され、ほしい人がいれば持ち帰ることが可能だ。この「旅文ポスト」の特徴は手紙を書いてポストに投函し、展示されている手紙を持ち帰るストーリーの中に消毒という行為が含まれていることである。ハガキを取るためにボタンを押した瞬間に消毒液が出る仕組みだ。旅行が難しい状況だからこそ、想いを乗せた手紙が私たちに変わって全国を旅する。この仕組みによって私たちは消毒というコロナ対策を自然に行うことが可能になるので、より多くの人が消毒行為を行い、コロナ感染者の減少に役立つ。

「旅文ポスト」を実寸サイズで制作を行った。主に、ダンボールと紙を用いて制作した。この作品は手作り感がある。それは精巧なものより、人が作ったことが目に見て分かるほうが人の重要性を伝えられると考えたからである。全て全く同じものになるより作った人によって何かが違う事のほうが人が関わっているように感じられると考えた。このポストの色は黄色で統一されている。色を統一することですぐ「旅文ポスト」であることを分かりやすくする狙いがある。ポストの黄色はどんな天候でも状況でも明るく照らす太陽をイメージしている。ポストは下部と投稿口が透明になっている。投函と落下する瞬間が見えることで手紙を書いた主が自分の代わりとなる手紙を少しでも長く見送れるようにするためである。

「旅文ポスト」というストーリーの中で自然に消毒という行為を行えるようなデザインであり、人々が知らぬ間
に楽しくコロナ対策を行えることが分かった。また、コロナ対策という問題だけでなく観光の話題への広がりがあることにより、観光地の問題にも触れることができた。改善点としては全体的なデザインの統一感を持たせること、消毒要素が薄過ぎることである。さらに展示方法の改良も必要であることが分かった。この展示方法では手紙を持っていっていいことが伝わりづらい、持っていく手紙がランダムに選出されたほうが面白いのではないかという意見もいただいたので、意見を活かしさらに改善していく必要がある。

制作を終え、改善点を踏まえて展示方法について提案する。手紙を持って行っていいことが分かるだけのデザインではなく、持っていきたくなるようなデザインを考えた。ただ飾るのではなく、手に取りたくなる既存のデザインを利用した。自動販売機をモチーフに展示方法を考えた。ここでは「人力手渡し機」と呼ぶ。その名の通り、展示を行うほかに、機械で動くのではなく、人が入っていて、ランダムに手渡しするものである。旅文ポストは人の温かさを大切にする企画であるため手紙の手渡しにも人を用いる。渡す相手に合わせて声をかけたり、手紙を選んで渡すことで、機械の冷たさがなく、より満足感が得られると考えた。人が関わる展示方法を考え、お金は取らずに、自販機のジュースが並ぶ場所に手紙を展示し、出てきた手紙を取る瞬間に消毒され、消毒後に
手紙が受け取れるようにした。

「人力手渡し機」の実寸サイズでの制作を行った。サイズはポストより少し大きめで目に留まるが、自販機より小さいサイズで可愛いらしさを演出している。「旅文ポスト」同様に主に段ボールと紙を用いて制作し、手作り感を重視した。理由はポスト同様である。統一感を持たせるため、黄色と白を用いた色合いにした。中は郵便局をイメージして赤をメインカラーとしている。中の人が見え、手紙が仕組みが見えることで興味を惹くと考え、後ろの壁はなく、中は郵便局風にし、ユーモアを持たせている。機械ではなく、中で人が働いていることを表現することで、機械より人間の良さを体験しやすいと考えたからである。

最初の制作に比べて色合いを合わせたことにより、全体の統一感が出た。手紙を直筆で書いてポストに投函する行為と展示されている手紙を選出し手渡しする行為が合わさることでより、人の関りが増え、作品に温かさが増したように感じられる。全てを精巧に制作し、機械を導入した場合との比較を行うことで、人と機械の差の検証もでき、より作品の良さが伝わるのではないかと考えられる。

まとめ

人が消毒を行いたくなるデザインを中心に考えると、他の話題への広がりがなく、消毒がゴールになってしまうことが分かった。そのため、自発的なコロナ対策のデザインをする上で、消毒という行為だけに注目するのではなく、全体のストーリーを考えることで、消毒という行為がその一部分として知らぬ間に行われることが分かった。さらに、消毒を中心にしたストーリーではなく他の分野にも広がりのあるストーリーを考えることのほうがいろんな問題や出来事と絡めることが可能になり、他の事への関心も広げられると分かった。よりコロナと付き合っていくためには消毒などのコロナ対策だけに注目するものではなく、大きな視野で、消毒の先につながっている問題にも目を向けていく必要がある。消毒行為を促し、話題に広がりを持たせるデザインをすることで、コロナ対策を行う機会を増やすことを可能にしたので、これから、感染者の減少に役立つことが期待できる。

参考文献

研究を終えて

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