仙台駄菓子手ほどき
堀川瑠七
日原研究室
2020 年度卒業
これまでその定義が明瞭とは言えなかった「仙台駄菓子」の歴史から種類・店舗まで明瞭にし、「仙台駄菓子手ほどき」として作成した冊子を通じて、歴史ある仙台駄菓子への知識を伝えていくことを目的として手軽に読めるような冊子を制作しました。

はじめに

「仙台駄菓子」という言葉、お菓子をご存知だろうか。 「駄菓子」という言葉から、10円や20円で買えるような お菓子を連想する人も多いであろう。しかし、仙台駄菓子は古くから仙台の人に長く愛され伝承されてきた歴史ある菓子である。現存する仙台駄菓子屋は、最古の老舗である「元祖仙台駄菓子本舗 熊谷屋」をはじめ、「仙台駄菓子 の石橋屋」「仙台駄菓子本舗 日立家」の計3社である。

最近では、マスコミで取り上げられるようにもなったが、短い尺の中で放送できるのは、各店舗の雰囲気やオススメの商品などで、詳しい知識を得ることができない。また、参考となる資料や書籍も少ない。仙台駄菓子そのものを知らない・食べたことがない人がほとんどであるのが現状であることから、研究を始めるに至った。

調査

文献調査

仙台駄菓子の誕生の歴史や種類、課題について調査する。

取材

上記の調査で生まれた疑問について、現存する仙台駄菓子屋の方に伺い調査する。また、各店舗の特徴を掴むことも目的として取材を行う。学生に対して仙台駄菓子の認知度調査も行う。

施策の考察

文献調査・取材から施策を行う上での課題を考察する。

撮影

店舗ごとの特徴を視覚化するため、店舗の外観・内観や取扱商品、包みなどを自ら撮影し使用する。

制作

文献調査・取材・撮影で得た情報を元に、仙台駄菓子の手ほどき書となる周知媒体を制作する。

【学生への認知度調査】

仙台駄菓子の認知度を確かめるために、10〜20代の若者40人に対して、「仙台駄菓子という言葉を聞いたことがあるか」問いかけた。すると、17.5%の人は「聞いたことがあり実物も知っている」と答えたが、82.5%の人が「聞いたことはあるが実物は知らない」「聞いたこともないし実物も知らない」と回答した。

お菓子の名前を知っていてもそれが仙台駄菓子であるという認識がない、曖昧なイメージしか思い浮かばない人が多くいることが今回の調査で分かった。

研究方法

上記の仙台駄菓子についての調査を通して、課題とすべきは下記であると考える。

1、「駄菓子」という言葉に「仙台駄菓子」が埋もれてしまい、知名度が低下してしまっていること

2、江戸時代から受け継がれてきた菓子であるにも関わらず、簡単に手に入る資料が少ないということ

スマートフォンの普及もあり、新しい情報を簡単に調べられる環境が多くの人にあるため、「仙台駄菓子」という言葉を目にする機会を増やすことで認知度を上げられる可能性がある。この課題を解決するために本研究では、若者を中心に手にとって読みやすい資料を制作し、仙台駄菓子の存在を再認識する機会を作ることとした。

【制作】

制作する上で念頭におくべきことは、以下である。

1、仙台駄菓子の歴史・種類・3店舗の個性を強く訴える。

2、駄菓子についての豆知識をふんだんに取り入れる。

●表紙

仙台駄菓子の種類が豊富であることを示すため、表紙は仙台駄菓子のイラストを散りばめた。

 

●駄菓子の紹介

駄菓子は店舗によって見た目が異なるため、紹介ページはイラストで制作した。

●店舗の紹介

店舗の外観や概要、取扱商品を写真で掲載することで読み手にリアルなイメージがつくようにした。

その他に、駄菓子の製造の様子や石橋屋の駄菓子資料館を再現したページを制作することで、仙台駄菓子に興味を持ってもらえるような内容とした。

石橋屋

熊谷屋

日立家

 

 

まとめ

若者を中心として仙台駄菓子の認知度が低い。その要因は簡単に仙台駄菓子に関する資料が手に入らない、また、言葉を知る機会がないためだと考える。その課題解決策として、駄菓子の存在を視覚的に演出した、簡単に手に入る冊子を制作することは有効な手段であると考える。時代にあった読みやすさやデザインで制作することで、現代だけでなく後世にも伝えていく架け橋となることができるであろう。

参考文献

佐藤敏悦(2018)ふるさとの駄菓子 石橋幸作が愛した味とかたち.LIXIL出版.

仙台駄菓子本舗 熊谷屋 仙台駄菓子本舗 熊谷屋,2020年4月28日, https://kumagai-ya.co.jp/ (2021年1月7日閲覧)

仙台駄菓子の石橋屋 仙台駄菓子の石橋屋, http://www.ishibashiya.co.jp/ (2021年1月7日閲覧)

仙台駄菓子本舗 日立家(2009)仙台駄菓子本舗日立家,2009年11月24日, http://sendaidagashi.com/ (2021年1月7日閲覧)

研究を終えて

実は、私も今回の研究をするに至るまで仙台駄菓子をよく知りませんでした。歴史や種類どのような見た目か、何もかも初めて知ることばかりで研究を進めていくのはとても楽しかったです。現存する仙台駄菓子屋3社に直接取材し、それぞれの店主の方とお話ししました。皆さんとても温かく対応してくださり、お店のスタッフの方も何度訪れても笑顔で「いらっしゃいませ」と言ってくださり、なんだか実家に帰ってきたような、そんな温かさもありました。実際に駄菓子の製造の様子も見学でき、職人さんの心意気を直に感じ取ることができました。私も体験させていただきましたが、一見単純に見える作業一つ一つが長年の経験を経て身につくものである、ということがよく分かりました。私の出来は、もちろんまだまだでした…(笑)

実際に店舗を訪れることで、インターネットや文献では知ることのできない仙台駄菓子を囲む素敵な環境を体験することができます。皆さんも是非訪れてみてください。そして、私の研究を通して興味を持っていただけたら幸いです。

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