研究背景
2020年以降、新型コロナウィルスの流行によって私達の生活は大きく変化した。予測不可能なウィルスに行動を制限され、自分の生き方を見つめ直した人も少なくないのではないか。このような状況の下、自らの行動によって人々を元気づけたいと考え、その方法を研究した。
また、先の見えない日々を乗り越えるためには、自分と直接関係のない新鮮な話題や人の存在に触れてもらう必要があると考えたことから、SNSを使用して自らが前述のようなコンテンツを発信していくことにした。
以上から、Instagramを使用してイラストを投稿する「RANDING」という活動を行った。
▼イメージアイコン
RANDINGとは
本研究では、自らの発信によって周囲を前向きな方向へと促し、そのつながりを広げていくような取り組みを『RANDING』と規定した。RANDINGとは、landing(踊り場、着陸)という名詞とrandという乱数列を生成する関数(randomから派生)を組み合わせた造語である。
「踊り場」という表現は「踊る場所」という意味を持つ他、階段途中の広い場所を呼ぶ際にも使われ、さらに「景気の上昇局面で一時足踏み状態になる」という意味も持つ。よって「踊る場所」という意味はこの取り組みにおける『陽』の面、そして「階段途中の場所」「景気の足踏み状態」という意味はコロナ禍における『陰』の面を表現することができると考えた。
研究目的
本研究では、イラストの制作とInstagram(@zuppi29)への投稿を軸に、『RANDING』を考察・具体化し、提案する。
調査
実例調査(既存アカウントとの比較)
これまで、イラストのアカウント運営にあたり既存の類似アカウントについて調査してきた。調査方法は次の通りである。
⑴ イラストに関するハッシュタグ投稿や関連投稿から類似のアカウントを探す。
⑵ それぞれの特徴や傾向を掴み、さらに他のアカウントとの比較を行う。
この調査から、イラストを使用したアカウントは大まかに次の4タイプに分けられると考えた。
① 〇〇アカウントタイプ
② シリーズタイプ
③ 日替わりタイプ
④ たまにイラストタイプ
①は得意分野に特化してイラストを制作しているタイプである。②は①よりも多分野であるが、比較的統一感のあるタイプである。③は分野・描き方共に統一せず、日々その時の気分に応じて投稿するタイプである。④は稀にイラストを載せるタイプ(普段は主に写真を投稿)である。
①②は特徴づけられるため認知度も高まる傾向にあり、Instagramを利用してビジネスにしている(又はそれを目指している)アカウントが多い。③④は「趣味としてイラストを投稿している」か、「仕事の成果物として紹介している」場合が多く、あまりInstagramによる結果を重視していない印象がある。
本研究は『RANDINGの具体化』を目的にInstagramを運営することから、②の方向で実施していく。
研究方法
方法
1 文献調査
既存のイラストアカウントの傾向を把握し、比較する。
2 制作
文献調査を踏まえ、目的に即した制作を行う。
3 インサイト解析・修正
投稿のインサイト結果(アクセス数・アクション数)をふまえ、修正し次の投稿の制作を行う。
制作方法
本研究のイラストは当初アナログとデジタルを投稿毎に使い分けていたが、7月以降からテイストを確立するべく、反響の大きかったデジタルに統一した。
1 手描きアートワークの制作方法(4月~7月)
ボールペン(juice up 04)と手持ちの色鉛筆(①TOMBO COLOR PENCILSの12色②北星鉛筆株式会社の36色)を使用。また、手描きのものをデータ化し着色する際はスマートフォンアプリケーションの『Cam Scanner』を、修正する場合は『Photoshop Fix』を使用する。
2 デジタルアートワークの制作方法
手持ちのWindows10とワコムのペンタブレット『Bamboo』を使用。アプリケーションはAdobe Illustratorを使用し、目的に応じてAdobe Photoshopで編集する。
成果物
1 活動データ
以下、アカウントを開設した2020年4月7日から現在に至るまでの活動データを記載する。
活動月 ①投稿頻度②投稿以外の制作活動
4月 ①毎日②似顔絵依頼、イラスト郵送、ぬりえ制作
5月 ①毎日②似顔絵依頼
6月 ①週4回②似顔絵依頼
7月 ①週3~4回②似顔絵依頼、フォロワー100名越え
8月 ①週2回②似顔絵依頼(有料)、グッズ販売開始
9月 ①2週間に1回②月初め投稿開始
10月 ①2週間に1回②塗り絵ダウンロードリンク制作
11月 ①2週間に1回②グッズ第二段販売開始
12月 ①週1回②WEBサイト制作、アンケート実施
1月 ①週1回②ショップ開設、まとめ制作
【フォロワー数】115人
【総投稿数】73投稿(うち現在は20投稿のみ表示)
【依頼・グッズ売上】6,160円(依頼1件、グッズ4点)
4.3.3 特に反響があった投稿
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【詳細説明】
図1 映画『男と女 人生最良の日々』
映画のパンフレットを色鉛筆で描いたもの。クロード・ルルーシュ監督本人からの「いいね」をもらう。
図2 塗り絵のイラスト
4月に「#イラストレーターにできること」というハッシュタグと共に塗り絵を投稿するという取り組みに参加。フォロワー2名から使用報告を受ける。
図3 似顔絵イラスト
アカウント開始の4月7日から4月末まで、合計12名から似顔絵の依頼を受ける。現在は有料に変更。
図4 雑誌『GISELe』からの引用
雑誌から引用してイラストにしたもの。以前は多くて1投稿500~700アクセスだったが、この投稿で初めて1000アクセスを超える。現在は約2100アクセスに増加し、うち95%がフォロワー外からのリーチである。また、右下のブランドのCEOにストーリーズで引用される。これをきっかけに初めて知人以外から依頼を受ける。以降、イラストをデジタルで統一。
図5 アプリを使用したグッズ販売
オリジナルアイテムを無料で作成・販売できるアプリケーション「SUZURI」を使用し、8月からグッズ販売を始める。開設時の投稿は5名からコメントをもらう。3点売る。
図6 ネイルイラスト
フォロワー外のネイルアカウントを運営している方からコメントを頂き、プロフィールにID(@zuppi29)を記載してもらうことを条件に、アイコン使用してもらう。
まとめ
考察
前期ではフォロワー数やいいね!数の獲得を重要視したが、後期ではグッズの制作に注力した。また前期は更新頻度を高めることに努力したが、後期は制作に時間をかけるため、更新頻度を落とした。
アンケートで「特に印象に残った投稿」について質問した際、半数以上がそれぞれ異なる回答をしたこと、さらにその中ではいいね!数の少ない投稿を選んでいる回答者が複数いたことから、目に見えるいいね!数や高頻度で更新することに囚われすぎず、それぞれに需要のある投稿を制作する必要があると結論付けた。
展望
これまでの研究を通して、有料でのイラスト提供を実現したことや、アンケート実施時に「感動した」「ときめいた」「家族と盛り上がった」等の感想を頂いたことから、本研究の第一目的である「人々を元気づける」アカウントとしての機能を果たすことができたと判断した。
しかし、最終目標である商業化については未だ到達できていないことから、案件獲得に向けた運営の見直しを今後の課題とする。
参考文献
インフルエンサーマーケティングの基本
https://find-model.jp/insta-lab/category/influencer-marketing/about-influencer-marketing/
研究を終えて
これまでの自身の経験から、本当に苦しんでいる人々にとっては、直接相談に乗ってもらうことよりも、関わりの少ない第三者の日常が精神的な支えになるのではないかと考え、今回の活動を行いました。
この研究を通して最も感じたことは、時間をかけて自分が納得できるものを創れば、いつかそれを理解してくれる人が現れるということです。
卒業後もこの経験を忘れず、より成長した何かを生み出せるよう努力したいと思います。