中高生のためのサードプレイスづくり
連坊地区におけるクリエイティブ拠点の可能性
相澤舞佳
平岡研究室
2023 年度卒業
近年子どもの居場所づくりが進められているなか、中高生を利用対象とした居場所はあまりない。宮城県内では中高生共に不登校率が高く、それに対応したフリースクールは多く設置されている。しかし中高生が気軽に来られる学校でも家でもない第三の居場所=「サードプレイス」をもっと普及させる必要があるのではないかと考えた。本研究は仙台市連坊地区を対象敷地としたサードプレイスの設計と周辺敷地の再整備を行う。

はじめに

1.       背景・目的

近年、全国で子どもの居場所づくりが進められているが、特に中高生を利用対象とした居場所はあまり設置されていない。宮城県内では中高生共に不登校率が高く、それに対応したフリースクールなど不登校の子を利用対象とする施設は多く設置されている。しかし中高生が放課後気軽に来られて勉強や交流ができるような施設はあまりない。中高生が気軽に来られて安心できる学校でも家でもない第三の居場所=「サードプレイス」をもっと普及させる必要があるのではないかと考えた。前期では宮城県の中高生の現状とそれに対する動き、サードプレイスの事例収集、分析を行い、中高生のためのサードプレイスに必要となる機能をまとめた。本研究では仙台市内でサードプレイス施設の設計と対象敷地の再整備計画を行うことで、中高生が社会や地域と関わるきっかけができる場を目指す。

調査

2.       敷地について

2.1     対象敷地の選定

サードプレイス施設の設計にあたり、実際に建築する敷地の選定を行った。みやぎ子どもの居場所マップによると現在仙台市内のフリースクールまたは子どもの居場所的役割を果たす場は青葉区、太白区、泉区、宮城野区に4箇所、若林区に1箇所ある。また青葉区、太白区、泉区には中高生を利用対象とするサードプレイスが存在しており、今回はサードプレイスの機能がない宮城野区、若林区のなかで敷地を選定した。

JR、地下鉄の利用者数が多い駅をピックアップしそれぞれ周辺環境とメリット・デメリットを確認した。その結果、仙台駅から比較的近く近隣に中学校・高校が多い連坊駅周辺を対象エリアに設定することにした。

2.2     エリアの現状・課題

今回敷地に選定した場所は公園と民家、アパートが数件立ち並んでいる。前面道路沿いに地下鉄東西線連坊駅の出入り口があり、道路を挟んで仙台第一高等学校がある。駐輪場が隣接されていることから自転車の利用者がこの辺りを訪れることが多いのではないかと推測する。周辺には仙台第一高校のほか聖和学園高校をはじめ、薬師堂駅や宮城野原駅周辺も含めると近隣に中学校、高校が多く存在するエリアである。住宅地で一軒家やアパートが多くなっているが、大通り沿いにはコインパーキングが点在している。

今回この土地を敷地にするにあたって、周囲に住宅地が多く住民が集まるスペースがないことが課題であると感じた。そのため、今回は中高生のためのサードプレイスだけでなく地域住民が集まって地元を盛り上げる拠点となるようなコミュニティスペースを設けることを提案する。さらに元ある公園と駐輪場をより使いやすくなるよう再整備する。

研究方法

3.       施設内容・プログラム

3.1     メインコンセプト、ターゲット

今回設計する建物のコンセプトは「中高生が主体的に活動できる場所」である。中高生がお金を理由に夢ややりたいことをあきらめることがないよう、社会に触れる機会をつくり将来に役立つ場所とする。メインとなるサードプレイス施設の他に、Society5.0を見据えてプログラミングや動画編集などを学べるデジタルゾーンと、地元の人の活動拠点となりイベントが開催できるコミュニティゾーンの計3つのゾーンを設計する。

施設を利用するメインのターゲットは連坊駅周辺に通う中高生である。この周辺は自転車の利用者が多いことから、少し離れた薬師堂駅や宮城野原駅周辺に通う中高生も自転車を利用して来ることを想定している。また、敷地内にある地下鉄やバスなど公共交通機関を利用することで、少し遠い地区からも放中高生が課後や休日訪れることを想定する。さらにデジタルゾーンやコミュニティゾーンに関しては中高生だけでなく地元に住む会社員や自営業を営む社会人の利用を想定している。

3.2     プログラム、機能

中高生が活躍できる場所として、サードプレイス、デジタルゾーン、コミュニティゾーンの3つのゾーンを設け、3ゾーンが交わることでお互いの利用者にとってメリットを生む構成とした。図中①のサードプレイスとデジタルゾーンの組み合わせでは、中高生は利用料を魅了とし、デジタルスキル向上を目的とする。図中②のサードプレイスとコミュニティゾーンの組み合わせでは連坊地区を盛り上げることを目的とし、ここで行うイベントの企画・運営を中高生が主体となって行うことで社会と関わるきっかけや主体性を学ぶ。図中③のデジタルゾーンとコミュニティゾーンの組み合わせではデジタルツールを学び地域のPRにつなげることを目的とする。地元住民が自分の店や地域をPRするためにwebの作り方やポスターデザイン、動画制作などを学ぶことができる。

 

4.       設計方針

4.1     建物の設計

今回は中高生のためのサードプレイス、デジタルゾーン、コミュニティゾーンの3ゾーンを設計する。3ゾーンのハード面でのコンセプトは住宅地に合うようなあたたかみのあるデザイン、スケール感になるようにする。

サードプレイスではバンド、楽器練習、ダンス、料理といった中高生の夢ややりたいことをできるよう、防音室、運動用のスタジオ、調理室を設ける。また学校の図書室や自習室のような一人で黙々と勉強する空間ではなく、友達と一緒に勉強や談笑ができるスペースを設ける。デジタルゾーンではYouTubeや動画編集、プログラミングなどができるような撮影ブースや編集ブースを設け、将来仕事に役立てるデジタルスキルを身につけられるようにする。コミュニティゾーンでは地域の人たちが集まって話し合いができるミーティングスペース、気軽に使えるシェアキッチン、ふらっと立ち寄って会話やお茶を楽しむ縁側や畳のスペースを設ける。

4.2     公園、駐輪場の再整備計画

対象敷地は元々公園がある場所となっており、平日の放課後などは親子や子どもたちで賑わう場となっている。そのため本来の公園の賑わいをなくさない外空間を構成する。植栽を配置したテラス空間や敷地を通った人が気軽に座って休憩できるベンチを設置する。従来の公園のように24時間誰でも通行できるパブリックな空間だけでなく、コミュニティゾーン内に来た人が使えるプライベートな空間も設ける。仙台市の建築物等緑化ガイドラインによると、今回の敷地では全体の14%を緑化する必要がある。

敷地内には地下鉄連坊駅の隣に自転車等駐輪場が設置されており、現在は自転車162台、特赦自転車等39台が収容可能となっている。平日午前中に視察に行ったところ8割程度利用されており利用者にとって需要が高いことが分かった。しかし現在の駐輪場は敷地の端に2階建ての建物として敷地の端に設置されているため、手前の道路を歩くときに圧迫感を感じた。またこの場所に駐輪場の建物があると今回設計した建物がまわりから認識されにくいと感じたため、今回は駐輪場の形や配置を変更することとした。

まとめ

5.       まとめ

今回は駅・公園・駐輪場・中学校や高校が近いという立地の連坊地区にサードプレイス施設を設置する計画とした。この立地に施設を建てることで中高生が来やすいことはもちろん、駅の利用者や地元住民などいろんなタイプの人にとって気軽に訪れやすい場であるということが示せた。また、サードプレイス・デジタル・コミュニティの3ゾーンが組み合わさることで中高生同士だけでなく中高生と大人が関わるきっかけができ、双方にとってメリットのある活動ができる場であるということが示せた。この施設が今後中高生にとって楽しみながらも社会に触れ成長できるような場になることを期待する。宮城県では中高生の不登校率が高いという課題があるが、この施設でたくさんの人と関わったりデジタルに触れることで周りと関わることが楽しい経験になれば不登校の子にとっての居場所にもなるのではないだろうか。連坊地区にサードプレイスを核としたクリエイティブ拠点を置くことで今後「連坊=クリエイティブ」という新たなイメージを広めることができれば、今まで連坊にゆかりがなかった人も連坊のことを知り、新たな層が参入することによって今までとは違う特色を持ったまちとして連坊が賑わっていくのではないかと考える。

参考文献

6.              参考文献

[1]仙台市. 「建築物等緑化ガイドライン」. https://www.city.sendai.jp/ryokukasuishin/documents/greenguideline01.pdf(2023年12月18日閲覧).

研究を終えて

根本の「サードプレイスとは何か」という部分をもっと深く追及した空間づくりをした方が良かったと感じた。設計のパターンを何パターンか作り吟味するとより納得できる作品が作れたのではないかと思う。建物の設計だけで終わってしまったので、中の空間の様子や具体的な利用想定までできると具体的な設計案になると感じた。

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