滞留のまちへのリスタート
宇都宮市街地の回遊の新たな目的地
亀井渚央
平岡研究室
2023 年度卒業
歩行者で賑わうまちは、魅力的な拠点がエリアに満遍なく存在し、そこを目的として人々がまちを回遊することによって実現される。しかし、中心市街地のウォーカブル化に向けて動き出している宇都宮市では、拠点の点在には繋がっていない。そこで、活性化事業の広まっていない二荒町周辺に駐車場を暫定利用した交流と滞在のための拠点を設け、回遊動線や周辺空間の活用を提案することを本制作の主旨とした。

はじめに

ウォーカブルなまちづくりの広まりにより、日本各地で歩行者の目線に立ってまちを見る動きが高まっている。栃木県宇都宮市もウォーカブル化を掲げる都市のひとつであり、二荒山神社や東武宇都宮駅がある宇都宮市街地の活性化及び賑わいの創出へ向けた取り組みが行われている。そのひとつとして、2023年、宇都宮駅東口エリアに開通した次世代型路面電車システム(以後、LRT)の宇都宮駅西口エリアでの運用も検討されている。
宇都宮駅西側へのLRT導入やウォーカブル化の推進により、賑わいの誘発が期待される宇都宮市街地において、人々の歩行や滞留を促す空間や、周辺の利活用を提案することで、市街地全体の回遊性を高め、歩いてみたくなるまちの実現を目指す。

調査

宇都宮市街地は各種計画や屋外活動の場を軸として、人々の動きが活発でウォーカブルなエリアへと変貌しようとしている。しかし、週末や夜間の歩行者及び自転車通行量とは対照に平日の通行量が伸び悩んでいることが課題として挙げられ、賑わい創出に向けて平日や昼間の利用に目を向け、その時間帯での利用が見込める居住者、就業者に寄り添った機能をエリアに付加することが必要だと考える。また、仙台市と同様に、主要な道路と屋外広場などの各拠点が揃う好条件な地ではあるが、各拠点の配置位置には偏りがあり、活性化事業が広まっていないゾーンも存在しているという現状がある。

研究方法

商人地として賑わい、生活が展開されていた過去や空間特性を持つ宇都宮市二荒町周辺ゾーンにおいて地域交流や活動が展開される場や、歩いて楽しい回遊の場をつくることで、多くの人が新たな目的地を目指してまちを回るようになること、このゾーンに人々が集い留まり、次々と利活用を展開するようになることを、将来的なビジョンとし、本設計では駐車場の暫定利用と活用の提案、空き地や周辺の回遊動線の活用デザインを行う。

まとめ

二荒町周辺ゾーンにこの土地の特性を活かした地域の為の空間をつくり、このゾーンにおける賑わいや今後の利活用の可能性を検討した。ここでの滞留の場や回遊空間の創出は、歩く楽しみを提供し、ゾーン全体の活性化に繋がる。これにより、拠点がエリア各所に点在することになり、宇都宮市街地全体の回遊性が高まる他、拠点同士の連携なども見込まれ、広い賑わいを持つ魅力的なエリアになることが期待される。

参考文献

宇都宮市(2020).“第3期中心市街地活性化基本計画”.city.utsunomiya.tochigi.jp

研究を終えて

宇都宮市がウォーカブル化に向けて動き出すためには、活動拠点をつくることはもちろんのこと、そこに導くための動線の整備や活用が不可欠であると改めて感じた。また、ウォーカブルに対する動きが全国で広がり、未利用地や道路が人々の活動の場として利活用されていくことで、様々な人の交流を育むことができること、さらにその活動の参考となる取り組みが多く実施されていることが分かったため、更に様々な実例について知っていきたいと思った。

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