ミュージックビデオのデザインルール
西山さくら
鹿野研究室
2020 年度卒業
様々なデザイン分野に存在するデザインルールを、ミュージックビデオにも作るという研究を行いました。 J-POP、K-POP、洋楽のYouTube再生回数上位30位のMVを調査し、その結果からデザインルールを作成しました。また、デザインルールの有効性を確かめるためにルールを元に実際にMVを制作しました。

はじめに

グラフィックデザインには明確なデザインルールが存在するのに対して、ミュージックビデオには明確なデザインルールがない。だが、これまでに何本も制作されてきたミュージックビデオには共通点が見出せるのではないか。

また、K-POPは1日で再生回数1億回を超えたことが話題になったり、通算で5億回を超えたりするミュージックビデオがたくさんある。さらに洋楽は10億回超えのものが多く、圧倒的に規模が違うので海外の事例も参考にするべきだと思い、日本で親しまれているこの3ジャンルを徹底比較し、これらを集計してデザインルール化することにした。

調査

調査方法

YouTubeを利用。J-POP、K-POP、洋楽のYouTubeの再生回数上位30位のミュージックビデオのカット数、シーン数、シーンの内訳(セット撮影かロケの割合)、タイトル・字幕の有無、CG表現の有無、衣装替え回数、エキストラ数、ダンス・演奏シーンの有無、編集技法の種類、公開した年代、月を調べて集計。

 

調査結果

デザインルール

1.平均カット数:105回

2.平均シーン数:10シーン

3.ロケとセットの割合は6:4

4.平均衣装替え回数:3回

5.ロックには演奏シーン

6.アイドルにはダンスシーン

7.アイドルはパラレルイメージ

8.J-POPのザッピングイメージはシンガーソングライター

9.洋楽のザッピングイメージはフィーチャリングしたアーティスト

10.J-POPのMVを作る要素:歌詞とタイトル表示、ドラマシーン+演奏シーン、アニメーション

11.K-POPのMVを作る要素:ダンスシーン、豪華なセット、全体的にビビットカラー、ヘアカラーチェンジ、CG

12.洋楽のMVを作る要素:大人数のエキストラ、DJやラッパーとのフィーチャリング

研究方法

仮説

この調査結果をもとに考えられるデザインルールをMV制作時に適用することによって、各ジャンルのテイストが再現しやすくなると考えられる。世界進出を考えているアーティストや、K-POP寄りのコンセプトのアイドル、日本文化を取り入れたい方など、それぞれのジャンルに寄せてMVを制作したいとなった時に参考になるのではないか。また、プロの制作者に限らず、趣味で制作したい時など様々な場面で制作の指針として役立てられるのではないか。

 

MVの制作過程

・J-POP

撮影場所:山手線、雷門、東京タワー、スクランブル交差点、東京駅

制作過程:撮影と編集+文字入れ+アニメーション制作

使用ソフト:After Effects、illustrator、Premier Pro

制作期間:43日間

Vコンテの制作30日間、撮影3日間、実写の編集2日間、タイトルと文字入れ1日、アニメーション部分イラスト制作1日、7日間

撮影した本数:380本

 

・K-POP

撮影場所:STUDIO LEP(セット撮影)、3階メディアラボ(グリーンバック撮影)

制作過程:グリーンバック→合成+スタジオでの撮影

編集…グリーンバック映像の編集はAeでキーイング後、C4Dとunrealでカメラを動かして映像を制作、その後再びAeで色などの編集をした。

使用ソフト:After Effects、illustrator、Premier Pro 、Photoshop、Cinema4D、unreal engine4

制作期間:87日間

Vコンテの制作30日間、撮影2日間、実写の編集20日間、CG制作30日間、ダンス練習5日間

使用ソフト:After Effects、illustrator、Premier Pro 、Photoshop、Cinema4D、unreal engine4

撮影した本数:105本

・洋楽

撮影場所:山形〜徳島間の高速道路、東京〜徳島間の飛行機内、スクランブル交差点、淡路ハイウエイオアシス、タイのプーケット(友人提供)

使用ソフト:Premiere Pro、After Effects

制作期間:36日間

Vコンテの制作30日間、撮影3日間、実写の編集3日間

撮影した本数:329本

 

デザインルールをわかりやすく伝える作品を制作するという目標を達成するために、全体的な解説動画も制作した。

カット数、シーン数、シーンの内訳(セット撮影かロケの割合)、タイトル・字幕の有無、CG表現の有無、衣装替え回数、エキストラ数、ダンス・演奏シーンの有無、編集技法の種類の平均値と、各ジャンルの特徴を映像で紹介。

まとめ

考察

デザインルールを当てはめることにより、今までMV制作経験のない私でも手軽に制作できたことから、様々な立場の人に参考になると考えられる。これからMV制作に挑戦したいという制作の初心者など、より多くの人に役立てられるルールをつくるという目標を達成できた。また、このデザインルールによって、各ジャンルの特徴が再現しやすくなるため、それぞれのジャンルに寄せてMVを制作したいとなった時に役立てることができるのではないか。

一方で、1パターンになってしまうので全ての制作に使用するべきルールではないという点と、これに当てはめると必ずヒットするわけではないという点に注意が必要だ。

 

今後の展望

今回は回数などをメインに調査したが、多くのルールを発見できた。ポップスやバラードでのカット数の違いなど、さらに深く調べたらより多くのルールが発見できると考える。

参考文献

                                   ミックスリスト – ヒットチャート YouTube YouTube •                         

研究を終えて

今回はじめてMVを制作しましたが、このデザインルールによってシーンや構成を決めやすくなったと感じました。この研究を進めていく中で、J-POPとK-POP、洋楽の雰囲気の違いは何から来ているのかを数字データから解明できたのは特に大きな気づきでした。

これからMV制作に挑戦したい方、各ジャンルの違いに興味がある方など、様々な人にこのデザインルールが参考になれば嬉しいです。

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