新たなインテリアスタイルの提案
ミックススタイルの作り方と普及方法
眞木愛乃音
伊藤研究室
2023 年度卒業
インテリアスタイルの調査・分類を行い、その中で異なるスタイルの要素を組み合わせた「ミックススタイル」が一般化し定着していることに着目した。ミックスする各スタイルの比率や、受け入れられる層、特徴をまとめ作成したポジショニングマップでの位置関係などから組み合わせる際のポイントについて考察を行った。そして新たな組み合わせの模索を行い、異なる6つのスタイルを提案した。

はじめに

近年、インテリアスタイルは新たな名称のものが増加し続け、近似したスタイルが整理されずに溢れ、混沌としている。そこで、本研究ではインテリアスタイルの分類を適切に行い、整理することを目的としている。また、異なるインテリアスタイルの要素を組み合わせた「ミックススタイル」は地域やライフスタイルの変化に合わせて創り出されてきたものだが、現在は1つのインテリアスタイルとして一般化し定着しているものが多い。今後のライフスタイルの変化にも対応し発展していくことが可能なミックススタイルに価値があると考え、ミックススタイルの作り方のポイントを提示すること、そして新たなミックススタイルを提案し、インテリアスタイルの幅を広げることを目的とし研究を行った。

調査

インテリアスタイルの調査・分類

世界で見られるインテリアスタイルのうち重複のない48 スタイルを調査した。文章ではそれぞれの関係性や特徴の違いが掴みにくいため、ポジショニングマップを作成した。様々な分類方法がある中で、妥当性があり、将来的にインテリアスタイルの検討に活用できる方法を模索し、<自然的>⇔<人工的>、<色やものの数が多い>⇔<色やものの数が少ない>という2 軸のマップで、視覚化を図り分類を行った。マップの分布位置を検討するため、各スタイルにおいて「自然的」、「色の多さ」、「ものの多さ」それぞれを5 段階で評価し、位置づけを決定した。

 

ミックススタイル

時代背景の変化とともに、ライフスタイルに合うよう変化させていく機能的な側面や、新しい魅力的なインテリアスタイルを求めていく意匠的な側面から、他の時代や地域の要素を加えたり一部変更したりすることで、ミックススタイルが生まれた。そうして生まれたミックススタイルが多くの人に受け入れられ定着することで、「和モダン」などのように、ミックススタイルではなく1つのインテリアスタイルのカテゴリとして認識されるものも増えていった。

アンケート調査

目的:人々がインテリアに対してどのような意識を持っているのか調査する。また、新たに提案する6つのミックススタイルがどの層に受け入れられやすいものなのか、どのような普及方法が最適であるか提案方法を探る。
対象:全国に住む15歳以上 74 歳以下の100名( 男女比1:1)
年齢、性別ごとの回答の違いを把握するため15 ~ 59 歳を5 歳刻み(60 歳以上)で均等割付を採用。
使用ツール:Freeasy
調査日:2024 年1 月11 日
内容:インテリアへの興味関心の度合い・認知度・好みのインテリアスタイルなど選択式で8問回答してもらった。

ミックススタイルの作り方のポイント

◎各スタイルの比率
2つのインテリアスタイルをミックスする際には、各スタイルの割合が非常に重要となる。そこで、ハウスメーカーのホームページなどに掲載されているミックススタイルの写真を抜粋し、ミックスしていても上手くまとまりをもたせることのできる割合について2つの調査を行った。
(1) 視覚的な評価 全体を見渡し、異なるスタイルの要素がどれくらい目立っているかの観察
家具、カラーパレット、テキスタイルなど、各スタイルの特徴が表れている部分を色分けして塗分けを行い、その比率についてweb 画像解析ツールを用いて割合の平均を算出。
(2) 各スタイルに属する家具やアクセントアイテムの数を数え、比率の把握
➡どちらの調査でも平均して各スタイルが“7:3” の割合になっていた

◎ポジショニングマップでの位置関係(上の図表において線で結ばれているもの)
作成したポジショニングマップでの位置関係を見ると、2 つのスタイルは一定距離離れているものが多かった。距離が近すぎるものは特徴が近似しているため、組み合わせには向きにくいためだと考えられる。また、マップを4分割して考えると、上下、左右のブロックのもので組み合わせることが多いことも見て取れた。対極の位置にあるスタイルは調和が難しいことから用いられにくいことが分かった。

研究方法

新たなインテリアスタイルの作成

①組み合わせ表を作成し、既存のものとまだ組み合わされていないものを整理

②まだ組み合わされていない2つのインテリアスタイルを選択し、特徴を掴むためにそれぞれのスタイルの写真を集めコラージュを作り特徴を文章で抽出

③抽出した特徴を活かして選択したインテリアを切り抜きコラージュして空間へ投影したイメージのコラージュを作成

④アンケート調査にて需要の把握

アンケート調査

新たに作成したミックススタイルの中で、全体的に受け入れられやすいものは、順に「南欧×和風」「ブルックリン×北欧」「モダン×中国」という結果になった。このうち「南欧×和風」と「ブルックリン×北欧」は支持した人の男女比に偏りがないことから、性別に関係なく多くの人に好まれやすいスタイルであると言える。

単一のスタイルで好印象に感じるもののグラフを見ると、ブルックリンスタイルは男性人気の高いインテリアスタイルであることが分かる。そこで、新たにブルックリンスタイルに北欧スタイルの要素を取り入れたミックススタイルを作成したところ、女性にも受け入れられやすいインテリアスタイルとなったことが伺える。
➡ミックススタイルは、2つのインテリアスタイルの特徴を融合させることで、それぞれのスタイルの強い特徴が中和され受け入れる層を広げることに繋がる

 

模型制作

コラージュ画像では伝わらない空間の構成やインテリアの素材感などを伝えるため、1/20のスケールで模型の制作を行なった。アンケート結果から、新たに作成した6つのミックススタイルの中で性別に関係なく多くの人に受け入れられやすいことが分かった「南欧スタイル×和風スタイル」と「ブルックリンスタイル×北欧スタイル」の2つの空間を模型で表現した。

まとめ

ポジショニングマップを使用して、整理が乱雑になっていたインテリアスタイルの特徴を明確に区分し、それぞれの違いを視覚的に分かりやすく分類することができた。近年、価値観やライフスタイルの多様化に伴い、インテリアの重要度は増している。ミックスインテリアは、 “ライフスタイルの変化に合わせて、他のインテリアスタイルを組み合わせやすい”点から、これからのニーズに沿ったインテリアスタイルと言える。ミックスインテリアの作り方のポイントとしては、各スタイルの比率を7:3で用いること、特徴が近似しておらず、ポジショニングマップにおいて1軸の対比関係にあるものを組み合わせることなどが挙げられる。普及させるための方法として、インテリアへの興味が低い人にも体験してもらうことが重要であると考え、宿泊という行為に付随して体験することのできる宿泊施設の導入が効果的であると考えた。本研究を通し、インテリアの選択の幅が広がり、ミックススタイルの魅力について普及が進むことを目指す。

参考文献

[1] 茂木弥生子 (2017). 「日本における住宅インテリアの計画・設計に関する先行研究のレビュー」『駒沢女子大学 研究紀要』第24 号,p.179-188.
[2]遠藤現監修.専門学校ICS カレッジオブアーツ校友会編集制作(2014). 『インテリアデザインの半世紀』.株式会社六耀社, [158p].
[3]生活の絵本社 (1984 年). 『私の部屋 1984 年4,5 月号』.婦人生活社

研究を終えて

調査によってミックススタイルの魅力が明らかとなり、今後のライフスタイルの変化にも対応し発展していくことが可能な点から今後の展望に期待できると感じた。アンケート調査から、認知度の低さが課題であると考えたため、本研究を1つのきっかけとしてより多くの人に認知してもらい普及が進むことを期待している。

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