UNIQLOやGUなどのファストファッション産業の一般化は、安く高品質なトレンドアイテムを取得できるようにさせた反面衣類の廃棄率の増加を促す原因ともなっている。
環境省の2018年度の消費者アンケートを踏まえた報告書によると、「不要になったもの」があったかとの質問に対して割合が最も多かったのは書籍(38.7%)に次いで衣料品であった(28%)。衣料品が廃棄物となってからリユース・リサイクルに回されるのは20%で、以外は全て埋め立てや焼却処分となっている。
以上からファストファッションは、温暖化問題や環境保全という観点からはマイナスの存在だと指摘できる。そこで注目されているのが、古着である。古着は、着用価値の失った服をショップに売り、それを価値あるものとする人々に着用してもらうという循環型の仕組みで成り立つファッションだと指摘できる
調査
1.定性調査
まずファストファッションと古着を実際に購入している大学生それぞれ5人に「そのファッション形態を選ぶ要因は何か」という質問をした。1人あたり3つの回答をもらいその回答に優先順位をつけてもらった。この調査の結果から、古着の強みである「簡単に人とかぶらない個性的なファッションを楽しめる」点をFFユーザーの重視している「高いコストパフォーマンス」でファッションに取り入れてもらうことが、古着の魅力に気付くきっかけとなると考えた
2.利得行列
次に、古着とFFを組み合わせる上で最も適した割合を探る。定性調査の結果から得られたファストファッションの大きな要因「コストパフォーマンス」古着が選ばれる大きな要因「個性」という要素を使い、利得行列を行なった。結果から、最も点数の高かった「FFが多く、古着が少ない」という組み合わせを施策に取り入れる
研究方法
調査結果から、
「ファストファッションの中に古着を1つ取り入れる」というコンセプトを立案した。
上記コンセプトを実現させるためには、衣服としての素材そのものの質感を直接的に魅せることが効果的だろうと考えた。そこでマネキンを利用したOOH広告を取り入れることとした。
具体的には、上記コンセプトを身に着けさせた、マネキンに見立てたOOHを設置。オーディエンス(通行人)とOOHとの対話スクリプトは、オーディエンスが当該マネキンの古着部分を入れ替えさせることである。つまり本OOHの狙いは、通行人との対話スクリプトによって、新たなコーディネーションを創出させ、その魅力を感じさせるという参加型の広告である
なおマネキンには、広告趣旨を伝えるサイトのQRコードが敷設されてあり、それを通行人に読み取らせることによって、OOHの狙い及び概要を周知させるものとする。
上記OOHはアーケード等に設置され、それを気に入ったオーディエンスが、手持ちの古着と交換できるルールが設けてある。それによって対話スクリプトを発生させる。なお交換不可のFF部分にはタグがある。
また、パネルには企画趣旨と参加方法を伝えるサイトのQRコードを配置した。
まとめ
普段FFユーザーである学生5名と、古着ユーザーである学生5名にそれぞれこの設置型広告を体験してもらい、以下の内容で評価してもらった
①QRコードを読み取りたくなったか
②FFの中に一つの古着という組み合わせは魅力的か
③パネルに対する衣類の着脱は面白いか
④パネルに対する衣類の着脱は楽に行えたか
⑤古着をファッションに取り入れることに興味を持ったか
⑥持っている古着と交換したくなるか
この検証結果をまとめ、高評価項目の分析と中評価項目の改善策をまとめとした。
高評価
・興味を引くために情報を抑えQRコードのみをパネルに配置した効果が出ていた。
・二次元的なパネルに実際の服を着せる新鮮さが狙い通りであった。
・FFユーザーに対する根本の狙いを達成できた。
中評価
・「古着部分がわかりづらかった」→タグの改良
・「パネル側面の摩擦」 →テープで覆う
「スタンドから取り外さないといけないので腕が疲れる」
→パネル自体に穴を開け吊したまま着替えさせることができるよう改良
・「少し面倒なのでわざわざ自分の服を着せるところまではいかない」→行為自体の面白さをよりアピール
参考文献
[01] エリザベス・L・クライン. ファストファッション クローゼットの中の憂鬱. 春秋社
[02]安田美仁子 古着は、対話する。 Gambit
[03]渡辺隆裕 一歩ずつ学ぶゲーム理論数理で導く戦略的意思決定 裳華房
研究を終えて
造形部分に時間をとってしまい、検証と分析が疎かになってしまった。しかし実際に研究成果が形になった時の喜びは大きく、この感覚を忘れずに今後自分のモチベーションにしていきたいと考えた。古着が好きという個人的な想いから始まった研究が実を結んだため、反省点は多いが達成感も大きかった。