キャラクターの制作と展開
平和を愛する雲のキャラクター「くもも」
牧野柚希
伊藤研究室
2022 年度卒業
組織や団体のプロモーションとして役割を果たしていたキャラクターは、今ではメディアの拡大と共に、組織や団体と生活者を繋ぐ存在としても大きな役割を果たしている。しかし、生み出されたにも関わらず上手く活用されずに影を潜めたキャラクターもたくさんいるのが現状だ。人気キャラクターがなぜ長きにわたり愛されているのかを調査・分析し、そこで得た結果を元に、オリジナルキャラクター「くもも」を制作した。

はじめに

マスコットキャラクターは企業や地域の顔として広告や宣伝として用いられることが多い。商品の販売促進や地域活性化などに大きな影響を与えている他、ゆるキャラがブームなど社会的に話題に取り上げられたりもしている。そのようなキャラクターの現状と造形的な特徴を掴み、制作、展開を行い、キャラクターの新しい在り方について見出すことが目的である。

調査

(1)キャラクターの現状
かつてキャラクターは組織や団体のシンボルマークのような存在だった。メディアの拡大により、様々なコンテンツへの対応が求められていき、現在は組織や団体と生活者を繋ぐ役割を担い、より親しみやすい存在になっている。親しみやすさに加え、キャラクターは低コストで生み出すことが可能なため、どんな企業や自治体でも簡単にキャラクターを生み出すことができる。しかし運営していくコストや戦略が不十分であるということから影をひそめるキャラクターも多いのが現状である。
その中で長く残っているキャラクターの特徴の一つに、拡大するメディアの中でコンテンツに対応して露出を絶やしていないことが挙げられる。。近年では、SNSコンテンツの中でも平均1分以下のショートムービーがよく見られるコンテンツである。

(2)内面的特徴と造形的特徴
より具体的に好感度の高いキャラクターの特徴について、内面的特徴と造形的特徴を調査した。私にとって好感度の高いキャラクター20個をランキング付けしたところ、上位のキャラクターは外見よりもキャラクターの性格や背景に魅力を感じることがわかった。日本では外国と比べ、リアルなものよりデフオルメ化されたビジュアルが受け入れられやすく、さらに質感、表情・行動、線、形、パーツの5項目に分けて分析した。さらに描写だけではなく、外形についても着目した。切り紙を行い、描画だけではなく外形についても調べたところ、左右対称な点やそのものが持つ特徴を大袈裟に表現しているものは認識度が上がるのではないかと考えた。上記のことを踏まえてオリジナルキャラクターの制作に取りかかる。

研究方法

(1)制作手順
キャラクター設置とビジュアルのデザインはほぼ同時並行で進めていき、イメージを確立させた。企業や地域のマスコットキャラクターは一般的にテーマやコンセプト、その後の活用場所などが決められた後、モチーフやキャラクターの設定に取り掛かるが、本研究ではモチーフの設定から始めた。テーマに縛られず自由にモチーフを設定することにより、キャラクターの新しい在り方を探求していく。

(2)モチーフとテーマの設定
動物がモチーフになっているキャラクターが多い中で、自然現象で不定形という特徴を持つ「雲」をモチーフにしました。雲の優しく包みこむイメージからテーマを平和に設定した。「平和」というテーマは共感を持ってもらいやすいというのもテーマに選んだポイントである。

(3)キャラクター設定
出来たキャラクターが平和を愛する雲のキャラクター「くもも」だ。名前の由来は「雲も平和を願っているよ」というメッセージから冒頭のくももを抜き出した。年齢や性格などキャラクターの設定を行った。

名前:くもも
由来は、「雲も平和を願ってるよ」という意味から冒頭の“くもも”を抜き出した
一人称:くもも
性別:女の子
年齢:実は地球と同い年(心はピュア)。
性格:平和を愛する。明るい。思いやりがある。人だけではなく、植物や動物、生物から無生物まで寄り添い愛する。他人との交流や気持ちのつながりを楽しむ。
テーマ:平和。
日課:日常の小さな幸せを見つけること。
行動スピード:普段の行動はゆっくり
身体的特徴:雲
「雲」は平和から連想されたモチーフ
好き:誰かと笑ったり泣いたりする時間。
嫌い:争いごと。一人で退屈にしている時間。
願い:みんなが笑って暮らせる現在、明るい未来を考えられるような現在をつくりたい。

(4)デザインにおいて意識した点
意識した点は・雲の不定形という特徴を生かした非左右対称の外形、子供でも書きやすいシンプルな形、テーマに沿ってとげをつくらないというところを意識した。

(5)展開
5~10秒のアニメーションを制作しました。雲は変形するという特徴を持っているため、それをわかりやすく表現できると考えた。また、手元に残して愛着を持たせるためにグッズ化も行った。

(6)「くもも」の印象調査
まず「くもも」についてどのような印象を受けるかという質問に対して、「可愛らしい」という回答が100%で、「優しい」「明るい」「子供っぽい」という意見を得られた。「暗い」「怖い」「意地悪」といった回答はなく、「くもも」の印象は狙い通りという結果になった。
次に平和をテーマに掲げているキャラクターを集め、平和を連想させるキャラクターについて質問した。結果は「くもも」自体に票は入らなかったものの、他のキャラクターに入れた票の理由を参考にさらに発展させることは可能であると感じた。理由として、鳩は平和の象徴だから、ハートのカバンを持っているから、手を繋いでいて仲良しそうだったからという理由が挙げらた。
最後に「くもも」はどのような組織・団体で用いられそうかという質問に対して、天気関連、環境保全、子供向けの組織や団体といった意見が挙げられた。また、この結果もテーマから逸脱にしない回答を得られた。

(7)活用
活用方法に関しては、調査から得た通り、環境保全や福祉系、子供向けの組織や団体で活用することを考えている。また同じテーマを持つ既存のキャラクターとのコラボしたい。

まとめ

今後のくももの活用に関しては、企業キャラクターやご当地キャラクターとは別の枠で、「平和」というテーマを取り扱う組織のマスコットキャラクターとしての活用を考える。簡単に生み出されては消えていくキャラクターの現状で、長く愛されていくためには、企業や自治体のマスコットキャラクターと同等の扱いとは異なり、「平和」に関するテーマを取り扱う場所で背後に登場することにより、露出度を増して社会への浸透化を図る。また、コンテンツへの柔軟な対応や、時代に沿ったビジュアルの修正が必要である。

参考文献

山下和彦『成功するキャラクターデザインの法則』パイインターナショナル(2010)
いとうとしこ『売れるキャラクター戦略~“即死”“ゾンビ化”させない~』光文社(2016)
坂崎千春『イラストのこと、キャラクターデザインのこと。』ビー・エヌ・エヌ新社(2011)
荒木健太郎『世界でいちばん素敵な雲の教室』三才ブックス(2018)

研究を終えて

「くもも」を見て心穏やかな気持ちになったり、地球の平和について少しでも考えるきっかけになってほしいと考えています。

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