絵描きの抱える課題
資料の現状と今後の在り方
非公開
伊藤研究室
2022 年度卒業
マンガ・アニメ・ゲームなどの文化が日本のみならず、世界的にも注目されている中、SNSの普及で、趣味で絵やイラストを描いて投稿する「絵描き」が増えている。本研究では、多くの絵描きが、絵やイラストの作品を制作する際に参考としている「資料」に焦点を当て、絵描きの現状と抱えている課題についての実態を把握し、今後の課題解決案を提起することを目的とした。

はじめに

本研究は、絵やイラスト(以下:作品)を描く「絵描き」が、作品を制作する際に使用する「資料」に焦点を当てて、画力向上を中心とした絵描きの抱える課題についての助力となることを目的としている。
背景として、インターネットが普及した現代で、イラストレーターや画家などのプロのクリエイターの作品を、多くの人が気軽に見ることができるようになり、大学や専門学校、美術科高校などの高等教育を経ずとも、独学で作品を制作するアマチュアの絵描きが増加している。
プロ、アマチュア関係なく、表現したいものを描く力である「画力」を向上させることは、個人の欲求や、日本が誇る「マンガ・アニメ文化」を推進させるためにも、良いことであると考えている。
しかしながら、誰しもプロの作品を見たからといって、すぐに画力が上達できるわけではない。絵描きは作品を制作する過程で、描く手順や手法に意識が向いてしまうため、画力向上には、作品を客観的に見る第三者の存在が必要である。また描き方や被写体の流行は常に変化しており、作品の欠点と個性の共存について、独学では判断が難しいと感じる部分なのではないかと考える。
それらの絵描きの抱える課題を、作品を制作する際に参考としている「資料」が解決の助力になることは出来るのか、絵描きに意識調査を行い、今後の資料の在り方について模索することが、今回の研究の目的である。

調査

研究は作品を制作している人を対象とした。7月15日から7月22日と、1月1日から1月4日の計2回でアンケートを実施し、アンケート内の「作品をどれくらいの頻度で描くか」という設問で、「日常的によく描く」「たまに描く」「全く描かない」の選択肢の中から「日常的によく描く」と「たまに描く」を選択した累計41名に、作品制作に関する設問について回答をしてもらった。

研究方法

アンケートでは主に以下の内容について設問を設け、回答結果は以下の通りだった

・作品を制作する際に「資料」を利用したことがあるか

・(前質問で「ある」と回答した人に向けて)「紙媒体の図面表現」「電子媒体の図面表現」「文字情報」「3Dモデル」「現物」どの資料を利用したことがあるのか、またそれらに対して感じていること

・「あったらいいな」と感じる資料はどのようなものか

・「アナログ」と「デジタル」どちらで作品を制作しているか、加えてそれぞれの利点と欠点

・直近に制作する作品に直接関係なくとも、アイデアを探す際に利用するサービス

・作品制作以外で抱えている課題

まとめ

作品を制作する上で多くの人が資料を利用すると活用していたことから、資料の内容次第で多くのユーザーの作品を課題解決に導くことが可能だと感じた。

中でも「検索機能」「場所を取らない」が利点にあがる電子媒体の図面表現による資料と、「様々な角度から見ることができる」「質感や光の当たり具合がわかる」などが利点である現物の資料を掛け合わせたものが多く望まれていることがわかった。

また、研究の中で「長時間同じ姿勢をとり続けることによる健康被害」や「トレパクや無断転載などの著作権の問題」など、作品外での問題やそれに関する知識の浸透不足などが問題にあがっていた。

これらの需要をカバーできる資料が今後より必要であると感じた。

しかしながら、ユーザーの金銭的問題や好みの問題で手を出したくても出せない資料やデバイスがあることも判明したため、今後もあらゆる利用者層を加味した資料が展開されることが望まれる。

参考文献

Pixiv(2021)Pixiv14周年!アクティブユーザーの半数が海外からに!14周年記念インフォグラフィックを公開〜国内外で広がるPixiv、登録ユーザー数7100万人・累計投稿数1億作品突破〜,2021年9月10日(2022.07.24閲覧)
https://www.pixiv.co.jp/2021/09/10/110000

弁護士 河瀬 季.“頻発するトレパク騒動 イラストのトレースと著作権法の解説”.弁護士法人 モノリス法律事務所.2022.03.25.(2023.01.18閲覧)
https://monolith-law.jp/corporate/copy-plagiarize-tracing

研究を終えて

絵・イラストの創作文化が今後さらに発展することを願っております

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