ヨガを「読み描く」
ラバノーテーションを用いたヨガのプロモーション
及川詩織
日原研究室
2022 年度卒業
近年、日常的にストレスを感じながら生活をしている人や気分障害の患者数が大幅に増加している。一般的にストレスを解消するためには適度な運動が効果的であり、その適度な運動として、身体面と精神面の両面に良い影響を与えるヨガに着目した。本研究では、舞踊の記譜法であるラバノーテーションを用いて、一般的に浸透度の低いヨガをプロモーションするカードゲーム「body music」を制作、提案する。

はじめに

政府が3年毎に行っている「患者調査」の平成29年版によると、気分障害の患者数が43万3000人であった平成8年に比べ、平成29年では127万6000人と、20年間で大幅に増加している。

本研究では、当該気分障害の予防と解消のための方策として、「適度な運動」であるヨガに着目した。

一方、古来インドより伝わるヨガは、宗教性や精神性のイメージが強く、敬遠する現代人も少なくない。株式会社セブン&アイ出版による2017年のヨガマーケット調査によると、「ヨガが楽しそうだと思わない」と印象を持つ人が多いことが分かっている。

本研究の目的は、ヨガを、より身近な存在として認識してもらうべく、舞踊の記譜法であるラバノーテーションを用い、精神性に隠れて見え難かった「ヨガの構造」を明らかにし、より身近な存在として訴求することである。

調査

  • ヨガに対するイメージ調査

セブン&アイ出版のマーケット調査によると、ヨガ1年以内非実施者のうち、「今後1年以内にヨガをおこなってみたい」と回答した人は9.0%、「おこなってみたいと思わない」と回答した人は66.6%という結果になった。ヨガを始めてみたいと思わない人は、「ヨガが楽しそうに思わない」「お金がかかりそう」「近くに適切な場所や設備がない」と考えていることがわかった。

 

  • ストレスに対するヨガの効果

ヨガとは運動、呼吸法、瞑想を組み合わせたものであり、ストレス性疾患の患者への治療や治療後のセルフケアに活用されている。ヨガは交感神経優位の状態から副交感神経優位の状態に導くため、不安感、疲労感、睡眠障害等が改善されることが報告されている。

 

  • ヨガの浸透度

2017年に行われたマーケット調査によると、回答者3000人のうち月に1回以上ヨガを実施しているのは7.5%であり、ランニング・ジョギング・マラソンの実施率13.8%と比べると約半分の割合となっている。また、「ヨガをおこなったことがない」と回答している割合は78.4%であることも含めて考えると、現在の日本人へのヨガの浸透度が非常に低いことがわかる。

 

  • ラバノーテーション

ラバノーテーションとは、ルドルフ・フォン・ラバンが考案した舞踊の記録法である。下から上へ向かって所作譜を書き、体の動きを示す。身体の部位の角度、動作の仕方を正確に表すことができるため、音楽における楽譜のような役割を果たす。

研究方法

  • 施策の提案

先の文献調査によって、現代の日本人はヨガについて金銭面や場所の確保についてハードルが高いと感じ、避けてしまう傾向があることが分かっている。そのことから、本研究が目指すべきは、ヨガが、実施しやすく親しみやすいものであることを周知していくことに他ならない。

そのことから、本研究では、ヨガのポーズを楽しみながら学ぶことができるようなカードゲームの提案を行うこととした。

  • 制作

ヨガを活用したカードゲームのルールとプロトタイプの制作を行った。動きの譜を読み取り身体で表現するゲームであるため、ゲーム名は『body music』と名付けた。ラバノーテーションでヨガのポーズを表したカードを見て実際にポーズを取り、合っていた場合ポイントを獲得できる方式である。また、パッケージはヨガブロックを想起させるように木箱にコルクシートを貼り制作した。実際にヨガブロックの用途で使用することも可能である。

まとめ

本研究ではラバノーテーションを使用したことで正確にポーズを読み取ることが可能であるが、初見では難易度が高く感じるという課題があるため、理解しやすい説明書やルールを作ることが必要である。一方、楽しみながら実際にヨガを知ることができ、金銭面や場所の考慮の必要が無いカードゲームにより気軽にヨガをおこなえる点が、近寄り難いヨガの普及に繋がると考える。

今回は、ヨガに関する文献調査結果をもとにラバノーテーションを活用したカードゲームのプロトタイプを制作した。今後は、実際にゲームをプレイして得た意見をもとに使用感やルールの改良とデザインのブラッシュアップを行う。さらに、商品化を目的としたパッケージデザイン、プロモーション方法を検討する。

参考文献

  1. Ann Hhutchinson Guest『Labanotation: The System of Analyzing and Recording Movement』
  2. 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-09.html)
  3. 一般社団法人 全日本ヨガ協会(http://www.ajya.jp/yoga/)
  4. 現代の若者たちの人間関係-木村 晶子(https://core.ac.uk/download/pdf/72760402.pdf
  5. ストレス疾患患者に対するヨガ利用ガイド 医療従事者用-厚生労働省(https://www.ejim.ncgg.go.jp/doc/pdf/y01.pdf)
  6. 株式会社セブン&アイ 日本のヨガマーケット調査(https://expydoc.com/doc/12106250/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%A8%E3%82%AC%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E8%AA%BF%E6%9F%BB

研究を終えて

本研究では近寄りがたいイメージを持つヨガを手軽に始めるきっかけとなるようなカードゲームの制作を行った。ラバノーテーションを用いて正確なヨガの動作を行いながら、楽しんでゲームで遊んでもらえるものであり、ヨガに親しみが湧くようなプロモーションができたと考える。一方、ラバノーテーションの読み取りの難易度が高いことが課題として残るため、わかりやすい説明書の作成やルールの改良が必要である。今後は実際に使用してもらった感想や意見をもとに使用感の改良を行っていきたいと考える。

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