イベントにおける感染症対策支援ツールのデザインの提案
佐藤菜乃香
鹿野研究室
2021 年度卒業
コロナ禍になってからエンターテイメントの開催は難しくなった。そんな中コロナ禍のエンターテイメントの開催に繋がるアプリのデザインを作成。遠征先のコロナ感染者数の表示、検温機能や、ワクチン証明などを登録できるなど、コロナ禍ならではの機能などを複数付け、全てのデータをQRコードにし入場時に使用する形式にした。このアプリを使うことで、多くの人に安心してエンターテイメントを楽しんでもらえるようにしたい。

はじめに

背景

コロナウィルスの感染拡大により、社会はさまざまな影響を受けている。特に音楽業界を中心としたエンターテイメント産業は大きな打撃を受けた。しかし、コロナウィルスによってエンターテイメントがなくなるわけではない。そのため、考えたテーマが「コロナ禍を超えた先のコンサートのあり方の研究」であった。まずはコロナ禍のコンサート事情について調べ、コロナ禍でエンターテイメントを安全に開催する方法を考える予定である。

そして、自分自身が実際にコロナ禍のジャニーズ事務所が主催するコンサートに参加した際しっかりとした対策が見られないことを実感したため、対策をしっかりと行えるアプリのデザインを考える。

調査

2.調査

(1)コロナ禍のコンサート事情について

そして国外において、スペインで観客5千人での実験が行われた。実際陽性になったのは6人(そのうち4人はコンサート中に感染したわけではない)という結果が出た。

その結果からクラスターが起こりやすいという偏見は間違っている可能性が見えてきた。

(2)国ごとのコロナ対策リスト

・成功例

対策
台湾 他国の政府がコロナの存在を脅威として受けとめる以前に、すでに武漢市からの渡航者に検査・隔離を実施していた。テクノロジーを駆使して早期に追跡システムを導入するなど、その迅速かつ効果的な対応は世界中から絶賛を受けた。
ニュージーランド

 

速やかに全国健康調整センター(NHCC)を設立し、1956年健康法に基づいて疑わしい症例の報告を医療従事者に義務付けたほか、国内の感染数が102件、死者0人の時点で国境を完全に封鎖した。
アイスランド 大規模なロックダウンを実施していないにも関わらず、感染をコントロール出来ている。保健当局が迅速に行動する傍ら、専門チームを結成して感染経路を徹底的に追跡した。給与の100%がカバーされる寛大な休業補償制度により、自己隔離の必要がある人々が安心して自宅に留まれる配慮がなされていること、人口がわずか36万人強と小規模な国であることも、成功の要因の一つとされている。

・失敗例

アメリカ ワーストNo.1に選ばれた米国の指揮をとっていたのは、前トランプ政権だ。国民を守る立場にあるはずの大統領が率先して、マスク着用や追跡システムの導入を含むWHO(世界保健機関)の推奨を拒絶した。「放っておけば、奇跡のように消滅する」など、無責任な言動を繰り返した結果、2021年1月15日現在、感染者約2386万人、死者約40万人(データサイトWorldometersより)と世界最多を更新し続けている。
ブラジル 未だロックダウンを実施していない。それどころか、首都で開催された「反ロックダウン運動」には、ジェイル・ボルソナロ大統領が自ら参加するなど、他国との温度差が強く感じられる。
メキシコ 3月末にロックダウンを実施したものの、規制は明確さに欠け、効果的とは言い難い。また、米国との国境付近の移民キャンプは、適切な衛生管理へのガイダンスもなく放置状態だという。

 

研究方法

3.仮説

衛生的な行動、ワクチン、cocoaなどの追跡機能の活用など、適切な対策をしっかりすれば、これまで同様コンサートなどのエンターテイメントは行うことができると考える。だが、それを行うためには人数制限、スタッフ確保、サービス予約システムなどの大きなコストがかかる。コストを削減し、安全面を高めるためのサービスがあれば、エンタメは開催可能になる。ファン側、運営側、アーティスト側、いずれにもメリットがあるサービス、アプリがあればコロナ禍でのエンターテイメント開催も可能であると仮説を立てた。

 

4.制作

(1)既存のSNSアプリのホーム画面の調査

自分が良く使うアプリとcocoaのホーム画面を比べ、どんな特徴があるのか調査した。調査対象はLINE、cocoa、YouTube、Instagram、Twitterである。

共通の特徴として、ツールバーを持ち、そこには4~5つの機能が配置されている。しかし、cocoaだけはツールバーも持っていない。差をつけるために、これから作成するアプリは下にボタンをつける。

気付いた点は、ツールバーの中心にあるものが一番使うものではなく、Instagram、YouTube、LINEにおいてそれぞれツールバーの中でも使わないものがあると感じた。

その結果、これから作成するアプリは必要最低限でわかりやすく情報をまとめていく予定である。

(2)プロトタイプを作るための事前計画

今回は若い世代の支持が高く、公式のアプリも存在していない、ジャニーズ事務所をテーマにすることにした。

ペルソナとしては、19歳女性、年に4.5回ライブに行く、関東に住んでいる女性、などと具体的に設定した。

次に何を目的としたアプリかを検討しコンサートを安全かつ円滑に開催することを補助するアプリという目的に定めた。

トップページは、cocoaとは差別化できるものにしたいため、コンサートがさらに楽しみになるようなデザインにする。ヘッダーにお気に入りのアーティスト画像を使用し、QRコードですべてのデータ化、感染者数を一目で確認できるものにしていきたい。加えて、ジャニーズにはチケットのトレードをするサイトやアプリがないため、コロナや農耕接触者で行けなくなった場合のチケットのトレードや同行者を登録・変更する機能も必要だ。

なにより検温記録を写真などのしっかり記録をデータとして残せるように、体温計で一日一回体温を測ってもらいその写真を撮り数字としてデータ化することにした。

(3)実際のアプリのプロトタイプの作成

完成したアプリの特徴について、まずはホーム画面に、住んでいる県と次に自分が行く公演の開催場所の現在のコロナ感染者数・公演日までの感染者予想を確認できる。さらにホーム画面ではお気に入り登録されているアーティストの最新情報も確認できる。検温ボタンをすべての画面上に設置し、公演までの一週間記録することを義務化。会場に入場する際に必ず必要となるQRコード表示のために、ワクチン接種の証明写真またはPCR検査陰性証明書の写真を撮ることが必須である。ワクチンを事情があって打てない場合もあるためPCRでも可能にした。

ただのコロナ対策のアプリにならないように、あくまでもファンに使ってもらうことが前提のため、お気に入りアーティストを登録することでヘッダーが変わり、ツールバーの色も変えることで自分好みにカスタマイズできる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホーム画面        QRコード表示画面          検温画面

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チケットトレード           チケット確認画面           ワクチン接種

画面                               確認画面

(4)アプリのアイコンについて

ペルソナに合ったアイコンにするために、「ピンクを基調とした」「かわいらしい」ものを目指し、既存の女の子に人気のアイコンを参考にした。アプリ名はJ(Johnny’s)-ticketと設定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5.結論・考察

アーティストのファンだけではないSNSのフォロワー33人に一分ほどのアプリの説明動画を見てもらい、アプリについていくつかのアンケートに答えていただいた。

繋がるが100%という、とてもいい結果を得ることができた。

(1)アプリがコロナ禍のエンターテイメントの開催に繋がるかどうか

 

 

 

 

 

行きたくないという意見が1人から得られた。理由としては「感染リスクは変わらないから」と回答。

(2)このアプリがあった場合コロナ禍でもコンサートや舞台に行きたいと思うか

 

 

 

 

 

(3)cocoaと比べてどちらが使いやすいか

Cocoaよりも使いやすいという意見が多かったが、少数cocoaの方が使いやすいと回答。

 

 

 

 

 

(4)推しがいるかどうか

推しがいない人からの意見も聞くことができ、他のエンターテイメントの開催にも繋がるのではないか。

 

 

 

 

 

 

エンターテイメント開催繋がると答えた理由として、「自分や自分の周りの状況が詳しく把握出来ることに加え、リセールができることによってコンサートに行かないという選択肢にも踏み込みやすい」、「ニュースを見ない若者世代でも感染状況やコロナについての事を手軽に知ることができ、感染予防の意識向上に繋がる」などが挙げられた。

他に欲しい機能として、お薬手帳・持病欄、スケジュールを細かく入力できるカレンダー機能や持ち物リスト、遠征先で立ち寄ったお店の記録が挙げられた。

まとめ

アプリを制作する前に行ったゼミ内でのアンケートではコロナ禍のエンターテイメントへの参加に対しての意識は高いとは言えなかった。しかし、事後のアンケートでは、多くの人が行きたいと回答。このようなコロナ対策をしっかり行えるアプリがあった場合コロナ禍のエンターテイメントは止まらずに済むのではないか。そして、アンケートの意見を活かしつつさらに運営・アーティスト側の意見を取り入れることでよりいいものができるのではないか。

多くの人がより安全に、コロナへの不安を軽減し、楽しみな気持ちを捨てずにコロナ禍のエンターテイメントに参加できるように、これからも貢献していきたい。

参考文献

1)片桐悠貴:コロナ禍のライブ市場と大規模集客施設の展望~過去10年の総括と施設整備・運営のこれから~、株式会社野村総合研究所、2020

2)女子力アップに役立つおすすめアプリ2021|いい女が持ってる人気アプリとは?https://smartlog.jp/183284#S48226584

研究を終えて

研究最中にもコロナの状況は変わっていき、収まったと思ったらまた急増しての繰り返しであった。そんな中エンターテイメントも振り回されている。自分自身も何度か直前にコンサートや舞台の中止を経験した。コロナ禍のエンターテイメントはこれまでよりもネガティブな印象を持ってしまう。そんな思いを、この研究で少しはなくせたのではないかなと感じている。アンケート結果も自分が思っていたよりもいい意見の方が多く、もっとこのアプリをよくしていき、実装できたらいいなあと思うようになった。

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