パーソナルカラーの新たな可能性
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伊藤研究室
2021 年度卒業
一般的に「似合う色」とされるパーソナルカラーについて、科学的根拠が曖昧な部分を研究しました。色彩調和論の歴史から色彩の持つ「心理的効果」「科学的効果」を分類しパーソナルカラーの診断方法にどのように反映されているのかを調査し、また、制服などでファッションの自己表現を制限されることが多い高校生に向けて色使いを学ぶことができるような提案を行いました。

はじめに

髪色や洋服において自分に似合う色がわからず、自信が持てないといった経験をしたことのある人は意外にも多い。生まれ持った身体色(肌、髪、瞳の色)と調和した、一般的に似合うとされる色であるパーソナルカラーは、そういった悩みを持つ人が色を選ぶ際の一つの拠り所とされている。そんなパーソナルカラーの妥当性を調査した上で、制服や校則で縛られていた学生を卒業し、社会に出るタイミングであるミドルティーン世代に焦点を絞り、パーソナルカラーを中心とした色彩による自己プロデュースを提案する。

調査

ストッキングやファンデーションなど本人の肌色に直接関係するものと、後から自由に変えることができる髪色や瞳の色に大きく左右される衣服を同一軸でのパーソナルカラーとして捉えることに疑問が生じた。肌内部のメラニン量・ヘモグロビン量を測定できるZOZOGLASSによるパーソナルカラー分析と、人間の目によって、その人の雰囲気も加味しつつ診断する、パーソナルカラー診断において一般的に普及しているドレープを用いた方法の違いについて調査した結果、2つの診断方法から得られる結果には大きな誤差が見られた。ZOZOGLASSにおいては、計測後に勧められるファンデーションがおおよそ肌に馴染む色であることから、おそらくメラニン量とヘモグロビン量は正しく計測できているものの、その値とフォーシーズン分類との繋がりは不明である。
この結果から、肌の色に直接関わるファンデーションやストッキングなどと、衣服やポイントメイク(リップやチーク)などを同一軸のパーソナルカラーとして扱うことは誤解を生む原因になるのではないかと考える。

また、パーソナルカラーを調査している中で色彩の持つ特性を理解し、若いうちからたくさんの色彩に触れることが重要であると考えた。そこで、制服などで普段身につけるものを制限されることが多い高校生に向けて、身近なアイテムであるマフラーを用いた色彩間を養うプログラムを提案した。

研究方法

①色彩調和論の調査(文献調査)
②パーソナルカラー診断の実施
③提案

まとめ

フォーシーズン分類などにおいて科学的根拠が乏しく、批判的な意見も多く見られていたパーソナルカラーであったが、色の持つ心理的側面と科学的側面に分けて考えることが必要ではないかと考える。加えて、ファッションに興味はあるがなかなか自分を出すことができない高校生に対して、身近なマフラーを通じて色彩への感覚を広げてあげるというパーソナルカラービジネスの新しい可能性を、一例ではあるが提案できたのではないか。

参考文献

北畠耀(2006)色彩学貴重書図説.雄松堂出版
貞子ネルソン(1994)新カラーコーディネート術.現代書林
東京商工会議所(2003)カラーコーディネーションの実際
第3版 カラーコーディネーター検定試験1級公式テキスト 第1分野 ファッション色彩.中央経済社.290−300
八木橋利昭(1994)これだけは知っておきたい「実用色彩学」基礎の基礎.オプトロニクス社.83-89
マーク・チャンギージー(2020)ヒトの目、驚異の進化 視 覚革命が文明を生んだ,ハヤカワ文庫NF
花王株式会社(2020)”意外! シミュレーションで見えた 顔の印象を変える色”
【https://www.kao.com/jp/kaonokao/dna/6_2/】

研究を終えて

長年疑問に感じていたパーソナルカラー診断について、卒業研究という形で調査を行えたことはとても有意義でした。しかし、まだまだパーソナルカラーへの疑問点は多く、また高校生向けの提案についてももっと深めることができたのではないかと考えています。

この研究では知識以外にもたくさんのものを得ることができました。自分のものの見方や向き合い方、研究(または学習、仕事など)の進め方をあらためて見つめるとてもいい機会になりました。社会人になるにあたり、良いところはそのまま伸ばし、悪いところは正すとしたいです。

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