
近年、オンラインオーダーサービスの普及が進んでいる。オンラインオーダーを利用し、店舗に行く前に注文 と会計をインターネット上で済ませておくことで、待ち時間も少なく商品を受け取ることができる。現在、オンラインオーダーが主に利用されているのはマクドナルドや吉野家、スターバックスコーヒーなどのファストフード店である。オンラインオーダーは、商品をじっくりと 選ぶことができることや、店員と客とが直接やり取りをしなくて済むなどの利点がある。その利点が、煩雑になりがちな生花店での花束の注文にも適していると考えた。花卉業界はコロナ禍で、結婚式や卒業式などのイベントでの消費が落ち込み打撃を受けたが、生花店でのオンラインオーダーサービス導入を提案することで、日常的な購入が促進できると考えた。
調査
花束をインターネットで注文し、自宅や送り先に届けるというサービスは存在しているが、既にあるデザインから 花束を選ぶものが多数であり、店舗に行かずに購入できることをメリットとしている。インターネットでオーダーメイドができるサービスでは、メールや電話で花束のイメージを伝えるために何度も連絡をとる必要があり、手軽に利用できるとは言い難い。
研究方法
ゲームエンジン「Unity」を用い、オンラインオーダーサービス「PICK UP BOUQUET」を制作した。初めに表示される「TOP画面」では、花束の注文に慣れて いない人でも花束作成に取り組みやすいように、目安の値段と花の本数から最初に花束のサイズを選んでもらう。次の「花束編集の画面」では、花を選び任意の位置に配置することや、ラッピングの色を選ぶことができる。花 は生花店に一年中出回るものを中心に55種が選択可能で、色、頭文字、値段から絞り込み表示をすることができる。合計金額の計算は、花を追加・削除した時点でリアルタイ ムに行われるため、常に金額を把握しながら花束を制作す ることができる。次の「確定画面」では注文内容を確認し、最後の「注文画面」では、注文する店舗と受け取り日時、支払い方法を選び注文を確定する。
まとめ
20代の大学生と社会人で、男女それぞれ5名の被験者を対象に行なった検証の結果から、生花店で花を購入する習慣のない若者 にとってオンラインオーダーサービスは花の購入促進に有効であると考えられる。一方で課題は、画面上で制作した 花束とそれをもとに仕立てた花束とが、ボリューム感や雰囲気などの点でユーザーのイメージとは異なってしまう可 能性があるということである。このようなサービスを実用化するには、画面上でいかにリアルに近い表現ができるか という点が重要であり、360度立体的にデザインができるとよりユーザーが使いたいと思えるものになると考えた。
参考文献
一般社団法人日本花き卸市場協会 (2018) 花き物流シス テム高度化・転換実証支援事業 報告書 (https://www.jfma.jp/data_files/view/382/mode:inline) 国産花き需要拡大推進協議会 「花のある暮らし」を広げる大作戦(https://homeuse-hana.jp/wp- content/themes/homeusehana2020/pdf/hananoaru2020.p df)
モバイルマーケティングデータ研究所調査データ (https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1858.html) テイクアウト予約サービスiToGo 最新データからみるモバイルオーダー2 (https://itogo.jp/blog/article/itg_article_003_02.html) マクドナルドモバイルオーダー McDonald’s Japan (https://www.mcdonalds.co.jp/shop/mobileorder/) KFCネットオーダー ケンタッキーフライドチキン (https://www.kfc.co.jp/lp/delivery/) お花のギフト通販|おしゃれな花束やアレンジ|HitoHana (https://hitohana.tokyo/flowers)
研究を終えて
花束を注文したことがない人にとって、このようなオンラインオーダーサービスは生花に興味を持つきっかけや花束を買うきっかけになると感じた。しかし、このようなサービスを実用化するには、「画面上で注文した花束と実際の出来上がりのイメージに差がある」などの解決すべき課題があることも明らかとなった。また、画面上で注文を済ませられるのは便利である一方、生花の美しさや雰囲気などの魅力は画面上では半減してしまう。アナログなコンテンツがデジタルを媒体として市場を広げることの難しさと可能性を、本研究を通じて実感することができた。