2015年7月30日(木)、メディア表現の授業最終回にオランダの第二の都市、ロッテルダムで建築家、都市デザイナーとして活躍する松浦寛樹氏をお招きし、スペシャルレクチャーが開催されました。
受講生にも当日のお知らせとなり、少々驚いていた様子でしたが、ヨーロッパで多くのプロジェクトを進め、建築、ランドスケープ、都市デザインの領域で幅広くデザイン活動を展開する松浦氏のお話は大変刺激的で、レクチャー終了後の質疑応答でも熱心な議論が展開しました。

都市計画、アーバンデザインとは一体何か?
「都市計画」「アーバンデザイン」という言葉は耳にしたことがあると思いますが、まだあまり日本では一般的に馴染みのある分野ではないと思います。実は、今までこの分野の活動を民間の企業を巻き込み盛んに行っていた国はヨーロッパと北米の幾つかの国を除いて他に見られませんでした。しかしここ近年この分野の活動が世界のいたるところで急激に重要視されるようになってきました。止まることのない都市部への人口の集中とそれに伴う土地の枯渇、膨れ上がる車の渋滞問題、開発ラッシュに伴い放っておくとキノコのように次々と現れる建築モンスター達、いつの間にか消えてしまったかつての美しい景観や町並み、なんとか自分の都市に人を呼び込み、とどまらせようと躍起になる自治体間の熾烈な競争、実質的かつ政治的に要求される緑や水の環境改善、数えればきりがないほどの要因がこの動きに拍車をかけています。
「都市計画」「アーバンデザイン」は多々の諸条件の中で行われます。たとえば人口の推移の予測とそれに伴う住宅マーケットの動向、経済状況の推移とそれに伴うオフィスや商業施設の需要の動向, 交通問題の改善や駐車場の確保、土地の利権問題、公共空間や自然環境改善に対する小さめの予算と大きな要望、長めのスパンで考える行政側と任期のスパンで考える政治家とのギャップ、次々と入れ替わる「責任者」。つまり流動的に変わる諸条件を相手に、例えるならば、時折吹き付ける強風の中、屋外で速乾性ではない接着剤を使いながら、次々と変更を繰り返す設計図を持って、急かされながら紙で大きな模型を作るような作業です。
しかし実はこの複雑に入り組んだ状況も、時と場所に関わらず幾つかの普遍的な事実に還元することができます。
「儲けが少なすぎると誰も投資しない」
「アクセスできないと、人は来ない」
「車を上手くさばけないと住環境は良くならない」
「すでにあるものをうまく活かせばコストダウンを見込める」
「新しさ、古さは相対的な価値である」
「どこに住むか、どこで働くかは元来決められていない」
「美しいモノ、気持ちの良いモノは誰もが好む」
18年に及ぶオランダを拠点にした私の実務経験から、東西ヨーロッパ諸国とロシアでの、都市計画、アーバンデザインの プロジェクトの実例を元に、この分野で一体何が起こっているか、そしてこの分野の活動がどのように建築と密接に関係しているのか、していないのか、出来るだけわかりやすくお話ししたいと思います。
MAXWAN (マックスワン) 代表
松浦寛樹
また、レクチャー後には、宮城大学デザイン情報学科機関誌の DECADE 編集チームによるインタビューが行われ、レクチャーではお話を聞くことができなかった昨今のヨーロッパ事情、松浦氏の学生時代のこと、これからのデザインのことなど、さらに興味深いお話をお聞きすることができました。

スペシャルレクチャーとインタビューの内容につきましては、来春発行される DECADE+9 に掲載が予定されています。
インタビュー終了後に DECADE 編集チームより DECADE+8を贈呈しました。 
松浦寛樹氏 略歴
建築家・都市デザイナー MAXWAN (マックスワン) 代表
1973年東京都生まれ / 1996年東京藝術大学美術学部建築科卒業 / 1996年 West8 Landscape Architects (オランダ) / 1997年 MAXWAN Architects + Urbanists (オランダ) / 2004年MAXWAN Architects + Urbanistsのパートナー、共同経営者に就任 / 2015年 MAXWAN運営の傍らMASA Architects (オランダ) 設立 / 現在MAXWANにて都市計画、アーバンデザイン、ランドスケープデザイン、MASAにて建築設計、インテリアデザインの業務を行う/各教育機関での非常勤講師 (デルフト工科大学, ベルラーヘ・インスティュート, Rotterdamse Academie van Bouwkunst)

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