中田研究室が宮城県南三陸町戸倉長清水地域で取り組んでいる震災復興支援プロジェクト「A Book for Our Future, 311」が2012グッドデザイン賞を受賞しました。
学生の皆さんの丹念な取り組み、地元の皆さんとの実直な共同作業がデザインの分野での評価をいただくことになったのは、これからの被災地復興において大きな意義を与えることだと思います。
今後とも研究室の活動は継続します。どうぞ皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

また、グッドデザイン賞発表展が開催されます。
詳細はこちらをご確認ください。
(以下、グッドデザイン賞受賞作品掲載ウェブから転載。)
受賞対象名:地域再生復興プロジェクト [A Book for Our Future,311]
事業主体名:南三陸町戸倉地区長清水契約講
分類:都市づくり、地域づくり、コミュニティづくり
受賞企業:宮城大学 Team A Book (宮城県)
概要
“A Book for Our Future,311”は、東日本大震災で被災した宮城県南三陸町戸倉長清水の地域再生デザイン。宮城大学や集落の人々が中心となり様々な領域のデザインを実現。融合のプロセスから生まれる行為を考える。復興のシンボルとなる「ながしずてぬぐい」津波の浸水域を再生させる「平地プロジェクト」隣接地の新しい住環境形成の為の「高台プロジェクト」漁業の拠点となる長清水番屋などの個別具体的なデザインや、現地で実施されるワークショップ「ナガシズスケープ」展覧会などプロモーション活動も実施。一連の実績が未来の産業再生計画や具体的な集団移転事業の足がかりとなり今後も継続的に展開される。
プロデューサー:中田千彦(宮城大学)
ディレクター:中木亨、武田恵佳、富沢綾子、青木淳(青木淳建築計画事務所)
デザイナー:小室理沙、佐藤絢香、佐々木詩織、佐藤江理、大槻優花、dezajiz.
プロジェクトスタート:2011年4月6日
受賞対象の詳細
開発・企画について(サステナブル社会(持続可能な社会)の実現に向けて、応募対象が取り組んだこと)
限界集落と言われた三陸の沿岸部集落は、今回の津波によって壊滅的な打撃を受けた。家屋の高所移転を計画する「タカダイプロジェクト」では、浸水した平地での新たな生活をデザインしているが、過去に学び、後世に継承する生活の作法を正しくデザインすることが不可欠である。地域には受け継がれていた風習、風土があり、その意味を再考することなくして実現せず、今までの社会秩序や常識ではも通用しないことを痛感する。
デザインについて
(身体・人間」の視点からみて、応募対象が提供できること)
被災直後、長清水集落では地域住民が団結、連携し復旧、復興に取り組んできた。「ながしずてぬぐい」は人々が瓦礫撤去や農業再生の現場で汗をぬぐうためのシンボル的な存在として、皆で労働することをささせるデザインである。さらに、関連する地域再生デザインも、地域固有の人のスケールを意識し「身の丈」に相応しい生活環境の復活を目指す計画として取り組んでいる。
(「生活」の視点からみて、応募対象が提供できること)
三陸沿岸部の集落は、気候や環境の変化に応じた生産と生活を実践してきた地域社会である。被災により住むことが困難になった土地に代わる新しい生活環境と、集落の再生計画について、長清水固有の地域性を維持しつつ、発展的に持続可能な地域システムのデザインをめざし、住民とともに考え、そのアイディアをフィードバックすることを実践できる環境が整備できたと考えている。
(「産業」の視点からみて、応募対象が提供できること)
集落の主要産業であった、養殖漁業を支援するための提案は、プロジェクトの開始以来メディアを通じて高い関心を集めた。漁業作業の拠点となる「長清水番屋」の建設は、震災により離散した集落の人々の再集結を促し、漁業を通じたコミュニティの再生に寄与することとなった。また、「平地プロジェクト」では、浸水域の農業や商業の再開のプランを提案し、小さな産業活動の活性化への貢献が期待されている。
(「社会・環境」の視点からみて、応募対象が提供できること)
2011年9月に東京で開催されたUIA2011東京大会世界建築会議の会場で行ったデモンストレーションや展示を通じて、本活動への認識を国内外の建築家、デザイナーから得たことは、以降の活動を広げていく重要な機会となった。長清水という一集落について考え、被災地の現状を正しく理解し、より多くのアイディアやメッセージを集積、活用することが今後の復興と新しい社会のデザインの糧となったと考える。
(ユーザー・社会に伝えたいこと)
東日本大震災を経て、私たちの社会を取り巻く状況は大きな変革を迎えた。機智を必要とする現場に赴き、人に寄り添い、あるべき色や形、出来事を実現することがデザインの本質である事を再認識させられている。一連の活動を通じてコミュニケーションが生まれ、臨機応変に実践してきたことがネットワークを介して共有され、リゾームのように有機的に活動し、総体としてのデザインが生成し得る事を共感していただければと思う。
審査委員の評価
震災によって破壊的な被害を受けた宮城県南三陸町。国、県、地方自治体の具体的な復興政策が進まない。宮城大学が中心となり、具体的な復興計画をすぐに受け入れる余裕がない住民に絵を描き、伝え、対話し、その想いをさらなるアイデアへと置き換える作業を繰り返すことで、様々な領域の復興に向けたデザインを実現し次のステップに繋がっていった。それら一連の実績は今後具体的な移転事業の足がかりとなり、今後も継続的に展開されていく。震災直後から住民と一体になって行われたこれらの取り組みは、今後自立した地域再生の継続的な原動力として高く評価できると共に、今後の他地域における先進的な事例としても極めて有効であるといえる。
(担当審査委員| 南雲 勝志 (ユニット長) 大島 礼治 黒川 玲 手塚 由比 堀井 秀之 森田 昌嗣 敬称略)

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