文様とプログラミング

価値創造デザイン演習Iのデジタルデザインクラスでは「文様のデザイン」をテーマにプログラミングとデザインを習得するカリキュラムとしました。文様とプログラミングの組み合わせ?と思った学生もいる事でしょう。文様というと古くから伝わる伝統的な表現文化ですから、デジタルなプログラミング表現との距離感を感じてしまいますよね。でも、この二つ、デザインというキーワードを軸に捉えてみるととても相性が良いのです。

和風な印象が強い文様の一つ「青海波」。浴衣や手ぬぐいなど和物雑貨によく使われるので一度は目にしたことがあるでしょう。しかしこの文様は西アジア発祥。これだけでも驚きなのですが、この文様はササン朝ペルシャ時代(226年~651年)から使用されているとされる、とても古い歴史を持つ文様で、宗教や文化の伝播とともに中国や朝鮮を通じて日本に渡ってきたものなのです。数千年の長きに渡って国際的に共有される文様。いわば一種のオープンソース素材、クリエイティブ・コモンズ的な表現であると言っても良いかもしれません。

文様をビジュアル的な視点で観察すると、様々なアルゴリズムを見いだすことができます。単純な配置の繰り返しから、回転や拡大縮小を伴うもの、さらには偶然性を取り入れたものまで実に多種多様です。例えばこの青海波に関しては、大きさの違う同心円を数個重ねて配置し、それを同心円の半径の距離間隔で一行ごとにずらしながら格子状に並べています。

青海波

パラメータ化することで表現が道具化する

アルゴリズムを見出せるということは、文様を言語で表現できるということになります。すなわち「描かれた結果」がなくても、「描き方」さえ知っていれば、文様を再現することが可能なのです。さらに大きさや間隔が数値化されていれば、全く同じ文様を描きだすことができるでしょう。これ、何かに似ていませんか?例えば料理のレシピ。そしてプログラミングです。

こうした文様を観察し、作図とプログラミングから「新たな時代の文様」を生成するのが「文様のデザイン」の狙いです。この「新たな」という部分は、「変容可能な」を意味しています。プログラミングを用いたビジュアルデザインの最大の特徴は、表現に多様性をもたらす自律性を組み込むことができる点です。すなわちプログラミングで「文様を作る」のではなく、多様な文様を作るための「道具」をデザインできるのです。

宮城大学
事業構想学群
価値創造デザイン学類
鹿野護

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