人は古代から壁画や土器に文様を用いてきた。その歴史が古いのは縄文土器に描かれた縄文様を見れば明らかであろう。また紀元前2000年のメソポタミア文明では現在に通ずる様々な文様がすでに使用されていたことがわかっている。こうした文様は風土や文化を反映しながら変化し、宗教や経済の流通とともに世界各地に広がりながら混じり合っていく。

文様は幾何学文と動植物文に大きく大別されるが、それらのルーツをたどっていくと自然が持つ力を文様によって生活の中に取り入れたい、吉祥的な意味合いを持つものが多い。そのため描かれるモチーフには繁栄や多産、永遠の繋がりといった生命力を讃えるイメージが多くみられ、人間が自然に向けていた眼差しそのものがビジュアル化したものと考えることができるだろう。

また、文様をビジュアル的な視点で観察すると、様々なアルゴリズムを見いだすことができる。単純な配置の繰り返しから、回転や拡大縮小を伴うもの、さらには偶然性を取り入れたものまで実に多種多様である。さらに日本の文様においては、「繋ぎ」「破れ」「子持ち」「尽くし」などの文様を多様化する変形パターンまで存在する。

こうした文様を観察し、作図とプログラミングから「新たな時代の文様」を生成するのがこの演習の狙いである。この「新たな」という部分は、「変容可能な」を意味する。プログラミングを用いたビジュアルデザインの最大の特徴は、表現に多様性をもたらす自律性を組み込むことができる点だ。すなわち多様な文様を作り出すための「ツール」をデザインできるのである。

演習のスケジュール(180分×7回)
  1. デザインプロセス/プログラミング入門
  2. 幾何学の描画/画像データの扱い
  3. 繰り返しと偶然性/GUIの導入
  4. 描画の応用/ツールの設計
  5. ツール実装/画像データ生成
  6. ポスターデザイン/各自作業
  7. 相互レビュー/全体講評
テンプレートファイル

画像の読み込みや繰り返し処理、p5.guiによるパラメータ化などが組み込まれたテンプレートファイルを公開します。このファイルを元に自分の文様のプログラムを完成させてください。なお、ファイルをそのまま使うのではなく、独自の工夫点が加わるほど高評価となります。(現在準備中)

提出物
  1. プログラム(フォルダをZIP圧縮したもの)
  2. 作成した文様の画像データ(複数画像だと高評価)
  3. ポスターのPDF

締め切り 8/7(水) 23:59

評価のポイント
  • 文様生成プログラムはp5.guiを使用しパラメータを調整できるようにする。
  • ユーザーが操作して文様をカスタマイズできるようにすること。多様性が重要。
  • プログラムを独自に工夫する。
  • イラストレータ素材のクオリティを高める。
  • 文様のコンセプトの文化的視座や妥当性(講義「色彩と形態」での文様回を参考にすること)
  • 期限の厳守(指定のフォームからアップロード提出)
プログラミングについて – p5.js

下記テンプレートフォルダをダウンロードして展開し、ドキュメントフォルダのp5jsフォルダに移動。
描画命令を使ってビジュアルを作成して、Slackの「#価値演習1_提出」チャンネルに提出。

繰り返しの描画(Draw関数)
課題制作のプロセス

1.アイデアをラフスケッチで考える

2. 文様の構造をプログラミングで構成する

3. イラストレーターで文様素材を作りプログラムに取り込む(全ての要素をプログラムで生成する場合は必要なし)

4. 文様素材をプログラムで配置

5. 変数をパラメータ化して変容可能な文様を実装

6. 文様を画像として保存して写真に合成

7. ポスターに画像とテキストを組み込む(詳細はこちら)

8. 印刷しトリムマークでカットして完成(詳細はこちら)

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