グッドデザイン賞 受賞デザイナー講座 報告レポート

2018年11月12日(月)、宮城大学価値創造デザイン学類において、グッドデザイン賞受賞者による講義が開催されました。グッドデザイン賞事務局の協力のもと、2017年に金賞を受賞されたプラネットテーブルの菊池紳氏に、食と農を軸とした先進的なデザインのあり方について講義していただくとともに、対話的なワークショップを通じてビジネスモデルの構築や、効果的な情報発信について学びました。

菊池 紳氏
プラネット・テーブル「SEND」 代表取締役社長

起業家。ビジネス・デザイナー。1979年東京生まれ。投資銀行や投資ファンド等を経て、官民ファンドの設立に参画し、農畜水産・食分野の振興に従事。2014年にプラネット・テーブル株式会社を設立し、『SEND(2017年グッドデザイン金賞受賞)』、『Farmpay』など、“食べる未来” に向けた事業を生み出し続けている。Next Rising Star Award(Forbes Japan) 受賞、 EY Innovative Startup Award(EY) 受賞。東京都「地域版第4次産業革命推進プロジェクト」推進委員ほか。

SEND公式サイト「SENDの仕組み」より画像引用

「継いでくれ」から始まった

きっかけは一本の電話でした。祖母から農家を「継いでくれ」とお願いされ、菊池さんは農業に携わることになりました。週末農業をし、試行錯誤を繰り返す中で農業の面白さに気づいたそうです。その反面、大切に育てた農作物が規格などによってはじかれてしまったり、大切に扱ってもらえなかったときの悔しくて悲しい気持ちを感じることが多くありました。また、誰に食べてもらっているのか、消費者からの声が見えないことへの不安を感じました。生産者は悪くないのに、農業の仕組みは何故こうなのか?と疑念を抱き、農業の仕組みと未来をよりよいものへ変えていきたいという想いから始まったのがSENDだそうです。

SENDについて

SENDは、生産者の持続的な生産活動を支える流通プラットフォームです。生産者は「需要予測」に基づき生産・一括出荷を行うことで、効率的・高収入な取引を実現できます。また、購入者は、365日いつでも注文でき、前日・当日に収穫された高鮮度の食材を「同時に」そろえることができます。SENDはIT/データ解析技術により需要を予測し、数量ギャップやタイムラグを解消し、フードロスを極小化した流通を実現しています。

SEND公式サイト「SENDの仕組み」より画像引用

仕組みのデザイン

SENDの仕組みには技術に頼り切り、便利さやスピードを追及するだけではない工夫がなされています。SENDではITを利用し、需要を予測しているのでたまに外れてしまうこともあります。そんなとき「余ったけどもうひとつどうですか?」や「注文したけど、もう少し欲しいな」の一言が出てしまった農作物のロスを解消することができるのです。結果としてSENDでは技術の力と人の手が上手に組み合わさっていることによってロスを少なく抑えることが出来ています。すべてをITに任せるわけではなく、人間のコミュニケーションが必要な場面ではきちんと生かすことが重要だと菊池さんは考えています。

グッドデザイン賞について

グッドデザイン賞は1957年に創設された日本で唯一の総合的なデザイン評価・水晶の仕組みです。デザインを通じて産業や生活文化を高める運動として、国内外の多くの企業やデザイナーが参加しています。SENDも2017年にグッドデザイン賞金賞を受賞しています。

ワークショップについて

前半の“リアルなビジネスのお話”をふまえて、後半のワークショップは学生も交えた対談形式で行われました。Businessとは「忙しい(busy)」や「金もうけ」ではなく、本来の意味は自分の関心をケア、支えることであることを前提に、「あなたがいいと思う、又はよく使う事業(コト、サービス、プロジェクト、イベント)について」、「あなたが事業を始めるとしたら何がしたいか」という質問に学生が答え、菊池紳氏に意見していただくというものでした。普段当たり前のように使用しているBusinessの正しい意味や、何気なく利用している事業について改めて考えなおすということは、学生たちにとって良い機会となりました。

講義のまとめ

今回の講義の学んだ事は、イノベーションが知と知の組み合わせであること、そして観察、共感、課題発見、新しい解決策の施策又は改善の繰り返しであるということです。広く情報を集め、知識を増やすことはアイディアを生み出す土台となります。また、自分が関わっている「自分事」から始めることで、共感しやすくなり、課題発見につながりやすいのです。解決策は一つではなく、ユーザーの使い方が変わることでサービスが向上することを知り、私たちが今後デザインしていくモノも変化していくということを学びました。

最後に、ビジネスモデルというあまり接しないものがこれからの活動を通しデザインにかかわっていく上で、これからも当たり前のように組み込まれているというメッセージを頂きました。今回の講義を通して学生たちはビジネスデザインの面白さを学び、今後のデザインへ生かしていけるのではないでしょうか。

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